ビジネス

2021.11.10

「思い出したくもない状況」から、新事業で大逆転。タカハタ社長の転機

タカハタの高畑洋輔社長


──会社の業績もそこから好転していったのでしょうか?

おかげさまで事業は伸び続けています。いまでは産業機械の製造に加えて食品事業にも参入し、自分たちでつくった機械で1日10万丁の豆腐をつくって卸しています。

実は、こうなったのは偶然の産物です。豆腐製造装置のオーバーホールをお客様から依頼されて3000万円かけて綺麗にしたのですが、お客様の都合で納品できなくなってしまった。「開発費分の金額を回収できるまで、これを使って自分たちで豆腐をつくるしかない」と思ったんです。

null
豆腐成型機

豆腐をつくると、産業廃棄物として大量のおからが出ます。これをなんとかできないかと思い、食品乾燥機メーカーをM&Aして、いまでは乾燥おからも販売するようになりました。将来は廃棄物を処理する装置だけでなく、食品の鮮度や品質保持ができる装置も開発して、フードロス削減に取り組んでいきたいと考えています。

食品事業なんてやったことがなかったので、もちろん最初は苦労ばっかりでしたが、自分たちで経験したからこそわかるリアルな数字がありました。結果的に技術力は向上し、お客様に提案できる幅も広がりましたね。

──そして最後の転機が40歳。グラフはちょうどプラスマイナスゼロ地点を指していますね。

ここで、全てが揃ったぞという気持ちです。昔はできないことばかりでしたが、いまのタカハタは、機械の設計から据付までの全てに対応できます。ミャンマーに工場も建てましたし、フードロス削減という大きなテーマに取り組んでいける土壌も整った。40歳にしてようやく「いまから挑戦できる!」というスタートラインに立てたと思っています。(転機③)

振り返ってみると、これまでさまざまな偶然に左右されてきたようで、結果的に望む方向に転がってきました。サッカーでは星がなかったけど、ご縁には恵まれました。その点では星があったのかもしれません(笑)

──これまでの原動力となったものは何でしょう? 

自分を動かしてきた原動力は、きちんと経営をできていなかった頃の「劣等感」です。そしていまの会社の成長を支えているのは、当社にチャンスをくださる人たち、そして従業員ですね。お客様から「タカハタさんは事業も素晴らしいけど、従業員の皆さんが素晴らしいね」と褒めていただく場面も増えて、本当にうれしい限りです。

null
社内食堂での昼食

ちなみにうちの父は、社長交代を直談判したときは「まだ早い」って渋っていたんですけど、いまでは「早よ変わってよかったわ、(会社がよくなったのは)俺が変わってやったからや」って言っています。会社の成長を喜んでくれていますよ。

人のために尽くすことは必ず実を結ぶけど、自分のためにしていることは本当に小さくて短期間の喜びや結果でしかありません。家業に入ったばかりの頃の自分は頑張っているつもりで、結局自分のことしか考えてなかったんでしょうね。

自分が経営者として大切にしてきたのは、素直であることと、常に前向きで明るくいること。弱みは認めて学ぶ姿勢を忘れないように謙虚に歩むと、自然と協力者も増えていきます。あまり自分の殻に閉じこもらないほうがいいと思います。自分はちょっと出し過ぎかもしれませんが、極端なぐらいの「オープンマインド」が大事ですね。そして何より、勇気をもって行動することが必要なのではないでしょうか。

文=一本麻衣 編集=松崎美和子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事