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2021.11.01

SF作家と起業家が対談 「ここではない場所」がビジネスに視点をくれる

SF作家 津久井五月


前田:常にアウトサイダーでいたいと。

津久井:「いたい」というよりも、勝手に「なっちゃう」だけだけど(笑)。SFに関して言えば、中国SFの『三体』は未来社会で中国人が文明の一翼をしっかり担っている話なんですけど、いまの日本人がそうした世界観を描けるかといったら難しいと思うんです。どデカく挑戦することに対して「本当に必要?」と引いてしまう視点が僕たちの世代にはある。現状に対して、はりを打つように改善していけないかという考えは強い気がします。

同世代の友達には、「自分のジャンルや業界を代表する」よりは「これができる」を軸に活動している人が多い。すでに成熟した分野がいっぱいあるなかで、僕はどの世界でも活躍できるわけではないけれど、「文章を書く」ことには自分なりの糸を通すことができる。エンタメもデザインも、いろんな世界を行ったり来たりしながらできることをやっていきたいと思っています。

──津久井五月にとって「成功」とは?

津久井:次の世代に「津久井みたいなやつもいるしな」と思ってもらえたらいい。僕にとっての京極夏彦さんは、ミステリー作家というよりも「京極夏彦さん」。ジャンルを代表するのではなく、その存在によって新しい世界が開けると思ってもらえるような人になりたいです。


つくい・いつき◎1992年、栃木県生まれ。2017年、『コルヌトピア』で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。小説の執筆のほか、企業とともにSFプロトタイピングも行う。

文=宮本裕人 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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