「論題の決まった会議であれば 、既存のミーティングツールが効率良い。しかし1人が喋って他のメンバーは聞くという形に特化しているため、ノイズキャンセリングされたり音が被ったりする。複数人での雑談など集団コミュニケーションには向かない」と、ジョンは他ツールとの違いを語る。
三菱自動車、リコー、エン・ジャパンといった大企業を中心に、スタートアップや中小企業でも導入が進んでおり、「近寄るだけで会話ができるので、空いている時間を確認したうえでビデオ会議を設置する手間が省ける」「チャットだとニュアンスを伝える作業や、返信が届くまでに時間がかかるが、オヴィスでは急ぎの仕事をすぐに相談できる」など、サクッとコミュニケーションが取れることへのポジティブな声が挙がっている。
料金は1スペース(最大50人が接続可)月額税込み5500円からで、リアルオフィスの一部を売却・解約してオヴィスに乗り換え、コスト削減分を社員の福利厚生に回すという活用事例もある。
オヴィスは9月、コロナ収束後はテレワークと出社のハイブリット勤務が当たり前になると見越し、リコーとのサービス連携を開始。
リコーの360度カメラをリアルな会議室に一台置くだけで、オヴィスから会議に参加する人も好きな画角で現場を見渡すことができるようになった。
日本で伸びる背景
多種多様なツールがあるなか、なぜ日本でオヴィス導入が進むのか。実はそこに“採用事情”が関係しているとジョンは話す。
「日本は近年売り手市場。企業では採用難による人手不足が発生し、より効率的で生産性の高い働き方が必要となり、2年前頃からレガシーな基幹システムを外そうという動きが出てきた。日本企業は業務のデジタル化やSaaSの導入を推し進めてきたので、新たなツールに抵抗がなく、受け入れられた」
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一方でジョンの出身地である韓国は、「日本の1、2年前のような状況で、『テレワークって何? オフィスに来ればいいじゃん』という考えがまだ根強く残っている」のだという。依然として企業が強い立場にあり、そのためデジタル化など職場改善がなされないのだ。
しかし最近では、韓国の大企業でも導入事例があり、SaaSへの認知も少しずつ広がり始めている。オヴィスとしては韓国のほかベトナムにも商機が見えてきており、グローバル展開にも本腰を入れ始めた。
テレワークを導入しようとする国、あるいは企業が増えてくれば、それがオヴィスにとっての市場になる。しばらくこの流れが止まることはなさそうだ。