既存投資家のインキュベイトファンド、三井住友海上キャピタルに加え、ヤマトホールディングスとグローバル・ブレインが共同で運営する CVC ファンド「KURONEKO Innovation Fund」、スパークス・イノベーション・フォー・フューチャーの計4社が出資。
Forbes JAPANでは、創業3年以内のスタートアップを表彰する今年のRising Star Awardで、ファイナリスト5社の1つとして選出した。
来年には宇宙での実証実験を控え、どのような展開を構想しているのか? 同社の浅川純CEOに聞いた。
小型衛星の普及で需要高まる
浅川は、東京大学の航空宇宙工学の博士課程に進んだ2016年、所属していた研究室の小泉宏之准教授(現Pale Blue CTO)からの誘いで水推進機の研究を開始した。「もともと水以外の推進剤の研究をしていたが、ただ『面白そう』と思って研究テーマを変えた」という。
大学から創業準備に必要な補助金を受けながら研究を進め、製品化の目処が立った20年4月にPale Blueを立ち上げた。
これまでの推進機は、大型衛星用に作られていたため、強い推進力を発揮するガスが使用されていた。しかし高圧で有毒なため、爆発などのリスクを持ち、専用の建屋や装置による管理が必要で非常に高いコストがかかっていた。
対して水推進機は、ガス推進機と比較して安全性の高さとコストの低さがウリだ。
近年、電子部品が低価格で小型化されたことを背景に、超小型衛星の普及が増えている。小型衛星のエンジンは従来ほどの推進性を必要としないため、水推進機でも飛行に問題がない。わずか0.2〜0.3kgの水だけで、約2年間、月への飛行や地球の周回が可能となる。
ガスに比べ安全で、管理費用を約10分の1に抑えることのできるというメリットも注目され、需要が高まっているのだ。
アメリカなどの企業も16年ごろから参入し始め、現在は世界で3〜4社が水推進機の研究・開発を手掛ける。