今年、各分野に精通した専門家や業界オーソリティ、過去受賞者で構成されるアドバイザリーボードと編集部で審査を行い、サイエンス&テクノロジー部門の受賞者として選出されたのが、岡井大輝だ。
電動モビリティシェアのLuup(ループ)は東京都で実証実験を行うなど、新しい交通インフラをリードする存在だ。一方、安全性への疑問も聞こえる。岡井大輝CEOは、使命を「人類を前進させること」と語る。
──事業は順調ですか?
4月23日から電動キックボードのシェアを始め、4カ月で30万km使われた。利用者数も順調に伸びている。ユーザーに対して機体が足りず、製造を急いでいます。
──普及に従って、安全性の問題も指摘されています。
当社が中心になって、政府や関係各所への働きかけを行っています。しかし、この新しい技術に対しての法規制の再検討と適正化は、まだ完了していない。我々は警察と協力して、「道路交通法」の順守を徹底していきます。オンラインでのテストの合格を義務付けるなど、普及までサポートしています。
──岡井大輝にとって「成功」とは?
当社を大きくするというよりは、「人類を前進させることが重要」だと思っています。極端に言えば、他社のサービスのみが生き残り人類を豊かにするのであれば、構わないと思う。ループはあくまで手段であって目的ではない。中途半端な同業が2、3社残るくらいなら、強力な1社が残ればいいのです。
──何をもって「人類の前進」とみなしますか?
SNSやグーグルマップの登場みたいに、「それらがなかった世界が想像できない」というもの。
公共交通機関として小型モビリティが普及すれば、土地利用が変わる。駅から遠く離れているなど、従来では移動に制約があった地域にも、たくさんのマンションや商店が並ぶでしょう。
──実現に向けた今後の取り組みは?
3年以内に日本全国にサービスを展開します。人口が密集している東京で安全が検証できたモデルであれば、ほかの地域は問題ないと考えます。また、高齢者などさまざまな人が使えるモビリティも開発していきます。
おかい・だいき◎1993年、東京都生まれ。東京大学農学部卒業後、戦略系コンサルティングファームに参画。2018年、Luupを創業。電動小型モビリティのシェアリング事業を開始。