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2021.10.29

MoMAのキュレーターも注目 新世代アーティストの「声」

サウンドアーティスト 細井美裕


──1億円あったら何に使う?

自分の研究所をつくります。芸術に触発された技術的な開発が始まることが重要で、そこに必要なのは「人」です。研究所に人が集まってくれたら、作品のコンセプトをプレゼンすることもできます。

ソニーオーディオチームや小野測器など、私の作品には協力してくださる企業さんが何社かあるのですが、そこで出会った技術者や研究者たちは、一見芸術に興味がなさそうでも、自分の想像の域を超えた答えを返してくれることがあります。研究している人、手を動かしている人の心をコンセプトで動かせるかが、私の作品においては重要です。

──今後の構想は?

インスタレーションでは声を使わずに「音」によってその空間を考えてもらえる作品の制作に興味が移ってきました。空間に関心をもったのは、コーラスの大会でいろんなコンサートホールで歌わせてもらっていたとき、ホールによって全然響きが違うことに感動した原体験があるからだと思います。だから、建築音響に携わっている人などとの共作にも関心があります。

──10年以内に実現したい目標は?

私がやっていることが、誰かの、何かかたちあるものに変わっていくこと。いまは、ビジョンの提供はできているけれど、それを社会に実装していくまでにはいくつもの段階もあります。もし企業や研究活動の過程に私がかかわれるのならば、ぜひ勉強させてもらいたいです。


ほそい・みゆ◎1993年、愛知県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。東京、初台のNTT ICCで「Lenna」を10月30日より予約制で展示。羽田空港第2ターミナルにてスズキユウリとの共作「Crowd Cloud」を展示中。

文=神吉弘邦 写真=映美

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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