ジョー・バイデン米大統領が掲げる「Build Back Better(より良い再建)」の実現に向けたこの法案の全容は判明しておらず、流動的な部分も少なくないが、州・地方税(SALT)の控除額を1万ドル(約110万円)に制限するいわゆる「SALTキャップ」を2年間取り払う措置が取り沙汰されている。シンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によると、これが盛り込まれた場合、米国の所得上位5%の人たちにとって、2023年に計約700億ドル(約8兆円)の減税になるという。
ドナルド・トランプ前大統領が2017年の税制改革の一環で導入したSALTキャップに対しては、高額所得者が多いニューヨーク州やニュージャージー州選出の議員をはじめ多くの穏健派民主党議員が反対しており、SALT控除を完全に復活させない支出案には賛成しない意向を示している。
民主党は投資所得に対する税の適用対象の拡大や、超富裕層の未実現のキャピタルゲインに対する最高税率引き上げについても議論しているが、CRFBの試算によると、これらが実現されても上位5%の所得層に対する増税額は2023年に計約500億ドル(約5兆7000億)にとどまる見通しとなっている。
つまり、SALTキャップの廃止によって、上位5%の高額所得者は計200億ドル(約2兆3000億円)の減税の恩恵に浴するかたちになる。うち約100億ドル(約1兆1000億円)は上位1%の減税分になるという。
CRFBは「議員たちが本当に高額所得者に対する税を引き上げようとしているのなら、SALTキャップの無効化はその実現をはるかに困難なものにする」と指摘している。
民主党のリチャード・ニール下院歳入委員長は26日、党内でSALTキャップの2年間停止案をまだ検討していることを認めた。25日にバイデンと面会したビル・パスクレル下院議員は、上限解除は調整において「たびたびテーマになっている」と述べている。
トランプ政権の税制改革ではSALTキャップは2025年末まで認められており、以後は元のように上限がなくなる予定。しかし多くの民主党議員は、党の社会保障関連支出案を支持する条件として、この制限の完全撤廃を求めている。
民主党は支出案の詳細を公表する時期を明らかにしていないが、穏健派議員らの反対などを受けて、先に発表していた3兆5000億ドル(約400兆円)よりも大幅に縮小するのは確実とみられている。