銃による暴力、コロナ禍の米27州と首都ワシントンで急増

Antonio Perez/Chicago Tribune/Tribune News Service via Getty Images

米国での銃を使った暴力の割合は、新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから3分の1近く増えていた。このデータは、オンライン科学誌サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)に先週掲載された調査が明らかにしたものだ。

専門家らは銃の販売の増加に加え、ロックダウン(都市封鎖)やその他感染防止策によるストレスやプレッシャーにより広範囲での暴力犯罪が増えている可能性があるを見ており、銃を使った暴力の増加はその一環だ。

同調査は、米国の全50州とコロンビア特別区(首都ワシントン)における銃に関連した負傷者や死者をまとめた警察の日報を分析した。期間は2019年2月~2021年3月だ。それによると、米国での銃を使った暴力は、新型コロナウイルス感染症が流行を始めて以降、前年よりも30%高くなっていた。

研究者らは、新型コロナウイルスが流行を始めてからの分析期間である2020年3月1日~2021年3月31日(13カ月間)に、約5万1000件の銃を使った暴力事件を特定した。その前の13カ月間は3万9000件近くで、銃を使った暴力事件は新型コロナウイルスが流行を始めてから増えていた。

報告によると、このうち銃関連の死亡者が約2万5000人、負傷者は4万3000人以上で、その前の13カ月間の死亡者数の約1万7000人、負傷者数の約3万2000人から増えていた。

研究者らによると、27の州とコロンビア特別区における銃による暴力のリスクは新型コロナウイルス流行前と比べて顕著に高まっていて、銃による暴力のリスクが減ったのはアラスカ州のみだった。他の22州では、コロナ禍での銃を使った暴力の割合について統計的に有意な変化が見られなかった。

研究者らは、コロナ禍の心理・経済的ストレスに加えて銃器の売り上げが急増したことが暴力が増えた原因となった可能性を示唆し、当局に対して外出禁止令や対人距離の確保などの措置による「意図しない社会・経済的」ストレスを認識するよう求めた。

新型コロナウイルス流行前の13カ月間と比べ、銃を使った暴力の割合が増えたことが研究から明らかになった州(コロンビア特別区含む)は次の通りだ。

アリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州、デラウェア州、コロンビア特別区、ジョージア州、アイダホ州、イリノイ州、インディアナ州、、アイオワ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシガン州、ミネソタ州、ミズーリ州、モンタナ州、ネバダ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オレゴン州、ペンシルベニア州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、ウィスコンシン州
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翻訳・編集=出田静

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