加入者の年齢層にマッチしたターゲティング
なぜ「イカゲーム」は世界的な大ヒット作品へと上りつめたのでしょうか。その理由の1つ目は、「ターゲティングの成功」が挙げられます。
イギリスのアンペア・アナリシス社が発表した2021年第3四半期の消費者データによれば、コロナ禍がようやく落ち着きを見せ、世界各地でロックダウンなどの防疫措置が緩和される傾向が高まるにつれて、メディア消費の人口動態が急速に変化。それに伴ってNetflixの視聴者層にも変化が表れたと指摘しています。
本国アメリカをはじめとするオンデマンドの有料動画配信サービスの利用が普及する地域では、Netflixに加入する24歳から44歳までの年齢層が、18歳から24歳までの年齢層よりも初めて上回ったことがわかりました。
主人公ギフン(中央)たちは恐怖のゲームに挑戦することに(Netflixシリーズ『イカゲーム』独占配信中)
つまり、Netflixは、若年層だけではなく、あらゆる年齢層から支持されるサービスへと変化しているのです。地域に関係なく、Netflixの利用者全体の年齢は、過去2年間で45歳以上が22%以上増加しているのに対し、若年層はわずか5%の増加にとどまっています。加入者の年齢層が全体的に上がっているという現象は世界的に急拡大しています。
「イカゲーム」の視聴者ターゲットの設定は、この現状をよく反映しています。例えば、主人公ギフンの年齢は、40代男性に設定されています。演じるイ・ジョンジェ自身も1973年生まれの現在48歳と、Netflixの利用率が増えている年齢層に当てはまっているわけです。年齢の設定のみならず、ギフンの境遇や悲哀が滲み出るような姿も、同年代からの共感が得やすかったと察せられます。
また主人公たちが挑むサバイバルゲームには、昔ながらの子どもの遊びが使われています。第1話で登場する「ムクゲの花が咲きました」ゲームは日本の「だるまさんがころんだ」であり、アメリカやイギリス、フランスなどでも似たような子どもの遊びとして存在しています。
挑戦者たちが最初に挑むゲームは「だるまさんがころんだ」(Netflixシリーズ『イカゲーム』独占配信中)
このほか「型抜き」や「綱引き」「ビー玉遊び」といったあらゆる年齢層が懐かしさを感じることができる遊びがとり入れられています。タイトルの「イカゲーム」は、1970年代から80年代にかけて韓国の小学生の間で流行した遊びと言われています。
ドラマでは大人たちが命を懸けて挑む恐怖のゲームとされていますが、幅広い年齢層の視聴者が親しみを覚えるゲームを選んだことも、「イカゲーム」の成功要因でしょう。