ビジネス

2021.10.28

大企業は社内ベンチャーを殺すのか? あるサービスの成功事例に学ぶ


社内ベンチャーのメリットは?


天辰氏に、社内ベンチャーを立ち上げたいと思っている人へのアドバイスも聞いた。

「社内ベンチャーの立ち上げは、退職してゼロから会社を興すよりも当然ながらローリスクです。それでいて事業をゼロから立ち上げることで得られる学び・喜びは非常に大きいので、恐れずチャレンジしてもらいたいと思います」

では、元々社内にいた人が子会社を立ち上げるのと、外部から転職してきた人が立ち上げるのとでは、違いがあるのだろうか。

「かなり違うと思います。内部人材と外部から来た人材では強みが異なります」という前提を話したうえで、それぞれ以下のような強みを挙げた。

• 内部の人材
組織の文化や顧客に精通していて、社内の人脈や信頼関係もできている。新事業に転用する技術を持っている。

• 外部の人材
親会社が持っていない、新事業領域に必要なノウハウなどを持っている。

askenの場合、道江氏が栄養指導のコアなノウハウを持ち、親会社の社内人脈も豊富だった。一方で、外部からやってきた天辰氏が人の思考のアルゴリズム化やITビジネスに関するノウハウ・経験を持っていた。このように、補完関係があり信頼できるパートナーを見つけることは大切なことだと言えよう。

「社内ベンチャーは、親会社があるため対外的な信用を得やすく、資金繰りや管理系業務(法務・労務など)の負担が少なく済みます。その分、事業そのものに集中しやすいと思います」

askenの場合は、親会社の社長がITへの理解や想いの強く持っていたこと、事業内容が親会社の歴史や理念に沿っていること、がポイントだった。「子会社の事業が赤字続きでも支えてくれたことで、今があると感謝しています」。

成功要因はコミュニケーションの良さ


そんなaskenは今後、どのように羽ばたいてゆくのだろうか?

「今後は、国内・海外事業ともに、もっと会員数を増やしていきたいです。また、“ひとびとの明日を今日より健康にする”ことを使命としているので、ダイエットだけではなく、糖尿病など食事療法が必要な方にも使っていただけるサービスを提供していきたいと考えています」

筆者の個人的な意見だが、今回のaskenの成功の一番の要因は、親会社とのコミュニケーションの良さではないかと思う。どちらかの意見を強制するとうまく行かなかったと思われる。

起業は、社内ベンチャーだから難しいとか、独立系だから簡単だとかそういうことはない。今回の件は結果的には社内ベンチャーで良かったのだが、天辰氏と道江氏なら、他の手法でもうまくいったかもしれない。そんな事をふと思った。

文=野呂エイシロウ

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