緊急措置としての電力配給制度はいまだに実施されており、氷点下の冬が近づくなか、多くの家庭や工場で、電力が断続的に供給されなくなるおそれがある。サプライチェーンの物資不足、インフレ、国民の不満はさらに悪化すると予想される。習近平主席の政治体制への影響は未知数だ。
なぜこんなことになったのか? 数々の要素が重なった、まさにパーフェクトストームによるものだ。国内の主要石炭産地の省で発生した洪水、パンデミックの状況改善を受けた中国製品需要の復活、中国共産党の矛盾したエネルギー政策、電力配給や価格統制といった極端な市場の歪みなどが、すべてエネルギー不足の原因になっている。
世界的にみても、極端な異常気象、生産の減少、グリーン発電への過度の依存、ロシアの日和見主義などが、エネルギー市場の逼迫を悪化させている。
中国のエネルギー集約型経済セクターでは、北京政府からの命令に従い、10以上の省で工場や企業に対する電力供給の制限が行われている。週に2~3日、工場の全生産を停止するよう命じている省さえある。工場主たちは、早くも5月の段階で、エネルギー不足のなかで操業を維持しようと、ディーゼル発電機に頼るようなっていた。今のほうがはるかに状況は深刻であり、混乱はエスカレートしている。
市民の反応には、ショック、恐怖、いらだちが入り混じっている。停電は、何の前触れもなく数時間から数日にわたって続く。山東華力(Shandong Huali Electromechanical)などの発電機メーカーの売上は劇的に増加し、裕興動力(Weifang Yuxing)の発電機は先月、完全に売り切れとなった。
冬が間近に迫るなか、中国は石炭生産の大幅な拡大を指示した。100以上の炭鉱に対して生産拡大の認可が出され、第4四半期には5500万tの石炭が採掘される可能性がある。中煤能源(China Coal Energy)や山西焦煤(Shanxi Coking Coal Energy)などの石炭採掘企業の株価は、今年に入ってほぼ倍増し、価格は記録的水準に達している。中国全土の燃料炭の先物価格は現時点で200%以上上昇し、10月第2週には1トンあたり1669.40元(約2万9700円)に達した。石炭は冬の暖房の主役であるため、価格はこれで頭打ちにはならないだろう。