深刻化する中国のエネルギー危機、影響は世界に広がるおそれ

Photo by Jeff Hutchens/Getty Images


だが、希望はある。中国政府は締め付けをさらに強化するのではなく、前例のない電力価格自由化によって危機を解決しようとする大胆な一歩を踏み出したのだ。

中国の経済計画を担う国家発展改革委員会は、市場の歪みを是正するため、石炭火力発電の電力価格を、需要と供給に応じて上昇させることを認めると発表した。エネルギー消費削減のインセンティブになるよう、価格に基準値から20%以内の変動が認められた。鉄鋼やセメントなど、エネルギーを大量消費する産業については、電力価格は市場原理によって決定され、変動20%以内という制限もない。これにより発電所は、発電にかかる高いコストを、商業・工業界のエンドユーザーに転嫁できるようになる。

しかし多くの人々は、これだけでは危機をすぐに解決できないばかりか、緩和することも難しいと考えている。中国の電力需要の59%は工業に占められており、家庭、オフィス、小売店すべての合計を上回る。中国の国内エネルギー需要のかなりの割合を占める重工業が使用量を削減しないかぎり、電力不足は続くだろう。

一方、価格自由化によって、重工業などのハイエンドユーザーの電力コストが上昇するのは確実だ。必然的に商品コストも上昇し、インフレ圧力がかかることが予想される。エネルギーコストの上昇により、工場は、コストの増分を消費者に転嫁するだろう。電気料金の高騰に加え、電力配給制度の継続により工場が生産をストップし、サプライチェーンの物資不足に拍車をかけるようなことがあれば、中国を震源とした世界規模のインフレになりかねない。世界は、中国の安い電力に頼ってさまざまな製品をつくることに慣れきっている。早急に対処しなければ、誰もが危機の影響を肌で感じる羽目になるかもしれない。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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