30U30

2021.10.28

現地で結婚、ムスリムに改宗。タンザニアで社会課題に挑む

社会起業家 角田弥央

次代を牽引する新しいリーダーを発掘し、ビジネスからサイエンス、スポーツ、アートなど多彩なジャンルから30人の才能に光をあて、その活動をForbes JAPANとしてエンカレッジしていくことを目的としている「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年、各分野に精通した専門家や業界オーソリティ、過去受賞者で構成されるアドバイザリーボードと編集部で審査を行い、ソーシャルアントレプレナー部門の受賞者として選出されたのが、Darajapanの角田弥央だ。



タンザニアでは、街中にゴミがあふれ、汚水によって発生するマラリア蚊の被害が大きい。また、農村地域の約8割の家庭で調理時に使われているまき・木炭から出る有害な煙を吸って命を落とす人が後を絶たない。角田は、有機ゴミや糞尿等を原料とした新バイオマス燃料を生み出すカーボンニュートラル事業で、この二つの問題を解決しようとしている。


──タンザニアでバイオマスブリケット事業に取り組むことになった経緯は。

薬学部に在籍時、途上国の医療や衛生問題の調査をしていました。そのころ参加した国際会議で、タンザニアの衛生問題を課題としているタンザニア人と出会ったことが、いまの事業につながっています。

この事業で目指すのは、衛生問題だけではありません。人口増加が著しく、若者や女性の働き先がないという社会問題があります。製造・販売・運搬過程で人材の雇用を生み出したい。いまは現地のエンジニアや専門家と、テスト販売に向けて商品開発を進めています。

──現在の環境で得た最大の教訓は?

乳幼児死亡率、医療格差、停電など、課題が多く残るタンザニアでは、健康で元気に暮らせることが本当にありがたく感じられ、人と人とのつながりをより大切にしたいと思うようになりました。「壁にぶつかっても、日々生きながらえて、望むことに取り組める幸せ」を実感できたことがいちばん大きいですね。

──今後10年以内に実現したい目標は?

「社会課題を解決したい」と日本を飛び出しました。現地の人との生活を通し、家族やコミュニティを大切にする文化に触れ、また、自身もタンザニア人との結婚を通し、ムスリムに改宗したことで、軸が大きく変わりました。いまは家庭をもちながら女性として活躍し続けることを重要視しています。

この取り組みを10年後も続け、タンザニアだけではなくサブサハラ一帯で、現地の生活に根差したインフラや公衆衛生、農業などの社会課題解決と人材育成を担っていければと願っています。


つのだ・みお◎1994年生まれ。明治薬科大学卒。薬剤師。在学中にエジプト・英国留学。人材系企業を経て、タンザニアで起業。NPO法人Be&Co Japanの代表も務める。

text by Yoshiko Yamakage / courtesy of Mio Tsunoda

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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