出版界を牽引してきた干場弓子が時代に矢を射る、新・出版社を始動

干場弓子


貫いてきたのは“責任感”と“強調力”


これまで、編集者として話題の書籍を次々とプロデュースしてきた干場。婚活ブームのきっかけとなった『「婚活」時代』や、ミリオンセラーを記録した『起訳ニーチェの言葉』。一世を風靡した勝間和代をはじめ、時代の半歩先を見据えて、多くのビジネス系著者を発掘してきた。自らの著書『楽しくなければ仕事じゃない』をリアルに実践する、輝かしいキャリアの持ち主でもある。
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女性経営者の草分けとして常に走り続けてきた前職の社長業と今回の起業。意外なことに、心構えは、ほとんど変わらないという。

「これまで私を動かしてきた最大の要因は“責任感”です。いったんやる!と決めたら、どんな状況であっても、その時の自分がベストを尽くして最高のパフォーマンスを出すのが、ビジネスをする者の勤めだと思っています。

読者はもちろん、著者、社員、取引先の方々、すべてに対して責任があります。そんな中で、本を読んだ読者からの“救われました”というお手紙に感動したり、社内結婚が増えて心が温まったり、会議で皆が生き生き発言することが嬉しかったり。1999年末、突然、一部仲介してもらっていた中堅取次が倒産した一大事の時は、私も含めて社員一丸となって乗り切りました。会社存続の危機でしたが、今となっては、それも感動の思い出です」

女性経営者が対峙する仕事と家庭の両立は、ワークバランス


干場の出版業界でのキャリアは、狭き門を潜り抜け、新卒で入社した世界文化社の家庭画報編集部からスタートした。その後、結婚・渡米を経て、再び女性誌編集部へ。

29歳の時、前職のディスカヴァー・トゥエンティワンの創業に携わり、1人からスタートした同社を社員数100名弱の会社にまで育て上げた。そして今、もう一度ゼロから新たに「起業」した干場の、挑戦し続けるバイタリティはどこからくるのか?

「私の世代で、結婚し子どもを持ち、かつ定年までフルタイムで働く女性は、ほとんどいません。そんな中で、夫の地位で自分のアイデンティティを保つ人生は嫌だなと思って、自分の力で立っていたいと思い続けてきたことが大きいのではないでしょうか。今の女性にとっては当たり前のことでしょうが」
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取材・文=中村麻美

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