30U30

2021.10.28

仕事がなくなってピボット。Acompanyが手がける「秘密計算」とは

起業家 高橋亮祐

次代を牽引する新しいリーダーを発掘し、ビジネスからサイエンス、スポーツ、アートなど多彩なジャンルから30人の才能に光をあて、その活動をForbes JAPANとしてエンカレッジしていくことを目的としている「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年、各分野に精通した専門家や業界オーソリティ、過去受賞者で構成されるアドバイザリーボードと編集部で審査を行い、サイエンス&テクノロジー部門の受賞者として選出されたのが、高橋亮祐だ。



漏えいのリスクなく、複数の企業から抽出したデータを分析する。それを可能にする「秘密計算技術」を世に送り出すのが、AcompanyのCEO、高橋亮祐だ。この技術がデータ・ドリブン社会の実現にアクセルを踏むかもしれない。


──秘密計算とは何ですか?

情報を暗号化したまま計算をする技術です。個人情報など社外に漏らしたくないデータを、元データをたどれない状態に加工してから計算する技術で、会社を横断したデータ分析にニーズがあると考えています。

名古屋大学医学部附属病院とは、各医院の経営状況や患者の個人情報を秘匿しながら、これまで難しかった病院の経営分析をする共同研究を行っています。「MPC」という秘密計算の方式に現在取り組んでいるのは、NTTと当社だけです。

──ビジネスモデル誕生のきっかけは?

ブロックチェーンの受託開発をしていた創業直後に、「仮想通貨バブル」があり、プレイヤーが急増して仕事がなくなりました。とにかく暇で、世界中のブロックチェーンに関するニュースを片っぱしから見ていました。そのとき、秘密計算に出会いました。当時はピンときていませんでしたが、顧客ヒアリングしていくなかで、他社とのデータ連携に課題があると知りました。それから一気に詳細を調べ、ピボットしました。

──過去最大の挫折は? どう立ち直った?

創業半年でチームが崩壊したとき。学生起業だったこともあり、個々の覚悟に差があって。崩壊直後にいまのコアメンバーが入ったことで救われました。

──いま大切にしていることは?

大事だと思うのは、やっぱり「人」ですね。ひとつの事業で100年続く会社はない。だから、事業は手段だと思います。どんな人を採用するかは意識しています。


たかはし・りょうすけ◎1993年、愛知県生まれ。名古屋大学卒。在学中の2018年にAcompany創業。ブロックチェーンからピボットし、20年より秘密計算システム事業を推進。

text by Daisuke Nakamura / Photographs by Emi

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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