『発達障害の息子を東大に入れたシングルマザー』に聞いた、幸せに一人立ちさせる子育て

菊地ユキ氏と長男大夢君(写真:須藤明子)


子育てで大切なのは、情報でもテクニックでもなく、自分の心のあり方、持ち方だと私は思います。どうかお子さんを信じて、そしてしっかりと見ていてあげてください。

(編集部):障害のある、なしに関わらず、「一人で生きていける子」に育てるために、一番心にとめたほうがいいことは何とお考えでしょうか。

菊地氏:実社会に出ていくにあたり、「生きていくために必要な日常」を教えていくことは大事だと考えています。

この間、大夢が、研いだお米を炊飯器で保温のまま炊いたんです。お米がすごくゴワゴワになって炊けてしまって。それを見て私は「ご飯ってこうなるんだ、すごいね」って言いました。でも大夢は、別の日に、また同じことを繰り返す。それでも、何度もあきらめずに教えます。

小学校時代、大夢は家でお風呂掃除係でした。でも完全には洗えないので、前の晩、私がお風呂から出た後に、全部きれいにしておくんです。そして次の日、「お風呂掃除してきて」と、大夢にお願いする。

だって自分が先に掃除しておけば、次入ったときに「あれ、全然綺麗じゃないじゃん」となる心配がないですよね。

それから、年末の大掃除で大夢にトイレ掃除を任せて、「できた」と言われたら、「じゃあ大夢、トイレ舐められる?」と聞いていました。「舐められない」と言われたら、「自分が舐められると思えるまで、綺麗にして」って言うんです。もちろん、本当には舐めさせないけれど、そう言うと必死になってやります。

親が子どもに求めるものはみんなそれぞれ違うとは思いますが、前提としてあるのは、子どもは親の持ち物ではない、ということ。成長する過程で、いつか親も、子どもから離れなければいけないと思います。

成長する子どもの自立を妨げるのは、もしかすると親の「心配」という行為かもしれません。

「見守って待つ」。それは、「放置する」ことではなく、子どもが求めたときに、すぐに手を差し伸べることができるよう、親は準備して待っている。いちいち口出ししたくなるのが親というものですが、それをせずにじっと待つ。本当に難しいことですね。

私もまだまだ出来ていませんが、常に心にとめておきたいと思っています。


菊地ユキ◎地域初の発達障害のわが子を「そのまま受け止める」ことで、東大大学院入学までに育て上げたシングルマザー。「オフィスANRI」に所属するタレントでもある。「子供はいわばダイヤモンドの原石。だから、ちゃんと磨いてあげてほしい」が持論。障害の有無に関わらない「ダイヤモンドキッズ」たちを育てる母親たちと立ち上げた「ダイヤモンドキッズプロジェクト」では、子どもたちの姿をYouTubeチャンネルで発信するほか、それぞれの父母による、または、それぞれの子育て世代の親による「ダイヤモンドの磨き方」もSNSなどで紹介している。ブログでの発信もある。

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構成=石井節子 編集協力=長谷川寧々

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