30U30

2021.10.27

世界初「木のお酒」は生まれるか? 20代の蒸留酒造家が目指すもの

発酵家、醸造家、蒸留家 山口歩夢

次代を牽引する新しいリーダーを発掘し、ビジネスからサイエンス、スポーツ、アートなど多彩なジャンルから30人の才能に光をあて、その活動をForbes JAPANとしてエンカレッジしていくことを目的としている「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年、各分野に精通した専門家や業界オーソリティ、過去受賞者で構成されるアドバイザリーボードと編集部で審査を行い、フード部門の受賞者として選出されたのが、山口歩夢だ。



廃棄される酒かすなどから蒸留酒「ジン」をつくるエシカル・スピリッツなど酒づくり・発酵に関連する3社で、蒸留などの技術責任者を務める山口歩夢。ハーブや昆虫などを素材に使うクラフトジンの先駆的な蒸留家だ。


──自分自身を一言で表す言葉があるなら、「蒸留酒造家」でしょうか?

大学院では人間の味覚についての研究をしていました。Join Earthが経営する昆虫食レストラン「ANTCICADA」では、コオロギから醸造する「コオロギしょうゆ」やタガメの華やかなフェロモンを生かした「タガメジン」などの商品開発をしています。

蒸留酒ではエシカル素材のジンを多く造ってきましたが、最初から「エシカルありき」でもなくて。ジンは材料をいろいろと試すと味が変わる自由度の高さが魅力で熱中しました。だから、単に「おいしいものをつくりたい人」なのかなと思います。

──今後10年以内に実現したい人生の目標は?

人生の目標ってあまり描かないほうで、「考えないほうが面白くなる」と思っています。でも、現在取り組んでいる「木材」を原料とした新しい蒸留酒を世界に発信したい野望はあります。

最近、エシカル・スピリッツと、木材を蒸留酒にする技術を現在もっている唯一の機関である、国立森林総合研究所(茨城県)と協業が決まりました。これを元に世界初の「木のお酒」をつくり出したいですね。


やまぐち・あゆむ◎1995年生まれ。東京農業大学大学院で醸造学を専攻。在学中から酒造で開発にかかわり、現在は、エシカル・スピリッツ、Join Earth、Whiskey & Co.の3社で活動。

text by Shumon Mikawa / photographs by Shunichi Oda

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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