豪政府の放射性廃棄物処理施設の建設地決定、反対派と法的闘争も

Gregory Adams / Getty Images

オーストラリアのキース・ピット資源相は2021年8月、国じゅうの核廃棄物を処理する施設の建設予定地について、南オーストラリア州南西部のエア半島に位置する、キンバ近郊ナパンデーに決定する意向を示した。政府がナパンデーをすでに候補地に選んでいたこともあり、この決定は大方が予想していたとおりだった。

一国の政府が核廃棄物処理施設の建設地を選んだと聞いて、真っ先に思い浮かべるのは、高レベルの核廃棄物や使用済み核燃料だろう。しかし、世界にある核廃棄物施設の大半は、放射能の強さが低レベルか中レベルの核廃棄物を処理するためのものであり、それらはすでに多くの国に存在している。低レベルと中レベルの廃棄物は安全性が高いものだが、高レベル廃棄物と同様に、論争を巻き起こすようだ。

世界に多く存在するそうした施設は、より正確には、核廃棄物というより、放射性廃棄物の処理施設と言うべきだろう。その大半は、医療施設や産業施設から出される低レベルの放射性廃棄物だ。オーストラリアでは現在、国内の100カ所を超える施設でこれらの廃棄物を保管している。中レベルの放射性廃棄物も一時的に保管されている可能性はあるが、同国には原子力発電所は存在していないため、原発や核兵器製造から排出されている廃棄物はまったく存在しない。

米国、フランス、スウェーデン、フィンランドには現在、放射性廃棄物処理プログラムがある。最終処理施設の建設地が選定され、膨大な資金と時間を投じて本格的な地下研究所がつくられ、施設も着工済みだ。米国については、放射性廃棄物を永久に地下に閉じ込める地層処分がすでに始まっている。

ピット資源相は、「この施設は、40年以上も検討されてきたものだ。具体的な検討に入って6年目になる。オーストラリアにはこうした施設が必要だ」と述べた。実際、放射性医療技術の活用と開発を継続するためには、放射性廃棄物の処理施設が必要だ。その利点は、考え得るどのような危害をもはるかに上回っていることを、建設阻止派は認識すべきだ。世界ではこれまでに、そうしたタイプの廃棄物によって被害を受けた人はまだひとりもいない。

オーストラリア政府は、地域社会開発助成金として3100万豪ドル(約26億7300万円)を割り当てている。処理施設の建設と運営を行う地元企業と従業員の技能を向上させるための予算だ。施設建設費は2億豪ドル(約172億円)ほどになる予定だ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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