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Under30フランチャイズ、テクノロジー、企業家を担当。

Paul Zimmerman/Getty Images for NASDAQ)

2020年4月2日、パンデミックが発生したばかりの混乱した時期に、手作りアイテムのフリーマケットサイト「Etsy(エツィ)」のCEOであるジョシュ・シルバーマンは、衝撃的な売上レポートを受け取って目を覚ました。

シルバーマンは、業績の低迷に備えてマーケティング費用の削減を急いでいたが、その日の早朝のレポートで、売上が急増していることが分かったのだ。Etsyのプラットフォームには、数百万点ものハンドメイドの品が出品されているが、売上の急増の原因はマスクだった。

マスコミは、CDC(米国疾病対策センター)が間もなく、すべてのアメリカ人にマスクを推奨すると報じ、人々はEtsyのコミュニティに押し寄せていた。「その日までは、当社のサイトで “マスク”を検索すると、ハロウィーンのコスチュームが表示されていた」と、笑いながら話すシルバーマンは緊急会議を開き、対応を検討した。

ある社員は、これが一過性のものだと主張したが、Etsyの約300万人の販売者コミュニティのパワーと柔軟性をアピールするためのチャンスだと話すメンバーもいた。

「これは我々にとってのダンケルク(第二次世界大戦でドイツ軍が英仏軍を追い詰めた戦い)だ。Etsyは、ハンドメイドで人々を救済できると考えた」と、現在52歳のシルバーマンは話す。

Etsyは販売者たちにメールを送り、マスクの素材やデザインに関する情報を共有した。プログラマーはサイトを作り直し、マーケティングチームはウェブやソーシャルメディアに広告を掲載した。その日のうちに、1万人の人々がEtsyでマスクを販売するようになり、2週間後には10万人の販売者が誕生した。

2020年の末までに、Etsyは7億4000万ドル以上のマスクを販売したが、これは同社の流通総額103億ドル(約1.2兆円)の7%に相当する。その年のEtsyの年間売上高は111%増の17億ドル、純利益は264%の増加となり、株価上昇率はテスラに次ぐ水準とされた。

2020年3月に最安値をつけたEtsyの株価は、その後約600%上昇し、ナスダック(115%上昇)やeBay(175%上昇)、ウォルマート(35%上昇)、アマゾン(100%上昇)らを圧倒している。創業16年のEtsyの時価総額は300億ドルに達し、アクティブな購入者は9000万人、販売者は500万人と、それぞれ倍増している。

安価な大量生産のアイテムを早く届ける仕事は、アマゾンやウォルマートに任せておけばいい。Etsyは、多彩な手作りのアイテム(そのほとんどは女性たちが作っている)の販売プラットフォームを、最先端のAI(人工知能)やデータサイエンスでパワーアップしている。

フォーブスが“最も公正な企業”を選ぶ「Just 100」にも選出されたEtsyは、かつてない困難な時期に、何百万人もの人々に貴重な副収入と楽しみを与えている。「私たちの使命は、Eコマースを人間味のあるものに保つことだ」とシルバーマンは語る。

編集=上田裕資

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