Eコマース業界の異端児
Etsyは長年、Eコマース業界の異端児として生き延びてきた。画家で写真家で大工でもあロブ・カリンによって2005年に設立された同社は、CEOを何人も交代させた後、2015年に環境やコミュニティに関する厳しい基準を遵守するBコーポレーションの認証を獲得し、株式を公開したが、ウォール街は、Etsyの社会貢献の姿勢と赤字を嫌っていた。
2016年にEtsyの純損失は45%増の5400万ドルに達し、翌年、ヘッジファンドのブラック・アンド・ホワイト・キャピタルの標的となった同社は、身売りの可能性を模索するよう求められた。しかし、Etsyはこれに反発し、役員会が新CEOを探して議論を重ねた結果、選ばれたのが、2016年に取締役会に加わっていたシルバーマンだった。
ミシガン州アナーバーで育ったシルバーマンは、1991年にブラウン大学で公共政策の学士号を取得し、ニュージャージー州の進歩的な上院議員ビル・ブラッドリーのもとで働き、その後スタンフォード大学でMBAを取得した。彼は、2008年に経営難に陥っていたSkypeを再建し、その後2011年から2015年までアメリカン・エキスプレスに勤務していた。
EtsyのCEOに就任した彼は、人員削減に着手し、総売上高が1000万ドル以下のプロジェクトを中止にした。その中には、150人のスタッフが1年半をかけて作り上げたウェブサイト「Etsy Studios」も含まれていた。
「それは本当に胸が痛むプロセスだった。やる気があって会社を信じている人には、残るように、懐疑的な人には去るように勧めた」とシルバーマンは話す。
彼はその後、Etsyの検索ツールを改善し、社内のサーバーをクラウドに切り替え、顧客サービスに投資した。2019年までに、Etsyの時価総額は300%上昇し、50億ドルに達した。シルバーマンが指揮を執って以来、同社の株価は約1800%上昇している。
現状の課題の1つは、ハンドメイドの一点もののアイテムを、アマゾンで商品を探すのと同じくらい簡単に見つけられるようにすることだ。Etsyは、商品のレコメンドや検索を改善するために、AIを駆使したコンピュータビジョンツールを構築し、何百万ものユニークな商品を識別し、タグ付けし、構造化データを作成している。
また、配送に時間がかかることで有名なEtsyは、透明性のあるタイムラインを提供し、顧客とのコミュニケーションを改善することも求められている。同社が新たに導入したダッシュボードは、顧客の満足度を評価し、優秀な販売者にサイト上でより高い評価を与える。
「私たちは、販売者が欲しがるものではなく、彼らに必要なものを提供する」と、シルバーマンは話す。「売り手にサービスを提供する上では、買い手のエクスペリエンスをしっかり把握することがことが重要だ」と彼は語った。