結核による死者数が再び増加 コロナ禍で長年の進歩が台無しに

Jefri Tarigan /Anadolu Agency/Getty Images


WHOは新型コロナウイルスのまん延により、同機関が取り組む世界のマラリアやHIVプログラム、さらには世界中での必要不可欠なサービスへのアクセスが阻まれる可能性についてすでに警鐘を鳴らしている。はしかやポリオ、髄膜炎などのワクチン接種プログラムの多くはロックダウン(都市封鎖)中に一旦停止され、多くの人がこうした危険な病から保護されない状態で残された。

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)のピーター・サンズ事務局長は新型コロナウイルス感染症について、「HIVや結核、マラリアと闘う上で、グローバルファンドが設立されて20年の間に遭遇した中で最も重大な障壁だ」と説明した。グローバルファンドは、こうした病と闘う取り組みに世界中で資金を供給している。

結核は細菌感染症で、肺が冒されることが多い。結核は歴史上、特に多くの人を死に至らしめてきた。結核は、利用可能な最新のデータである2019年には世界で13番目に死者数が多い病だった。(HIV陽性者の間の結核による死亡はHIV関連死として分類されている。こうした死者数を含めると結核はトップ10に入る)

結核は人類の間で数千年にわたりさまざまな呼び方で記録されていて、新型コロナウイルス感染症が1位となった2020年まではHIVを超え、死者数が最も多い感染症だった。結核の予防や治療は可能で、現在特に大きな影響を受けているのは比較的貧しい国だ。WHOによると、結核を患う人の約90%はわずか30カ国にいる。

新型コロナウイルス感染症の流行による混乱で遅れが出ているのは、感染症との闘いだけではない。米国のような富裕国では、通常の手術やがん検査・治療が延期または中止されていて、必要とする治療を受けられない人は数百万人に上る。

米公共ラジオ(NPR)、ロバート・ウッド・ジョンソン財団、ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院が行った最近の世論調査では、新型コロナウイルス感染症の流行により重大な病気の治療を延期せざるを得なかった米国の家庭は5世帯に1世帯ほどであることが示唆された。

WHOの報告書によると、結核に費やされた金額は2020年には約53億ドル(約6000億円)で、2019年の約58億ドル(約6600億円)から下がっている。これはWHOが必要だと主張する金額の半分以下だ。

翻訳・編集=出田静

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