コロナで死去のパウエル元米国務長官、追加接種の重要性示す

Paul Morigi/Getty Images for Capital Concerts

コリン・パウエル米元国務長官は先日、新型コロナウイルス感染症に伴う合併症のため84歳で死去した。パウエルは米大統領官邸の国家安全保障問題担当顧問を務め、大将まで上り詰め、米国初の黒人国務長官となった開拓者だった。

パウエルは1月にワクチン接種を完了し、ファイザー・ビオンテック製ワクチンを使用したと推測されている。米紙ニューヨーク・タイムズが報じたところによると、パウエルは先週追加接種を受ける予定だったが、具合が悪くなり接種を受けられなかった。

パウエルは多発性骨髄腫を抱えていて、新型コロナウイルス感染症を患えば重症となるリスクが高かった。白血病に関する医学誌ルキミア(Leukemia)に今年7月に掲載された調査によると、多発性骨髄腫患者の間で、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンにより十分な反応が生まれるのはわずか45%だ。

新型コロナウイルス感染症のワクチンは重症化を防ぐ効果が非常に高く、比較的程度は低いが感染も予防できる。しかしワクチンには、絶対に感染しないという保証はない。ブレイクスルー感染が起きることは実際にあり、年配者や慢性疾患を抱える人で、特に免疫力が低下している人の場合は問題だ。

米ブラウン大学のアシス・ジャ博士は、ワクチンの性能がどれほど高かったとしても感染者が周囲に多く存在すればウイルスが広がり、ワクチン接種を完了しているが免疫力が弱い人に深刻な害がもたらされかねないと述べている。

また、米国の感染者はまだ非常に多い状態だ。1日の新規感染者数が最近減少しているというのは、米国の7日間の平均値が約8万5000人であることを考えると相対的なものでしかない。

さらに、大西洋を隔てた英国では感染者が再び増加している。新型コロナウイルスが流行してから私たちが学んだことがあるとすれば、それは英国で起きていることは英国のみにとどまらないということだ。英国は今後、米国で起きることを示す指針であり、米国でも4~6週間の時差をへて同じことが起きる場合が多い。

英国で懸念されるのは、若い人の間の感染者数が着実に増えていることだけでなく、入院数とともに65歳以上の人の間での感染者数が増えていることだ。英国の65歳以上のワクチン接種率は96%と非常に高いことを考慮すれば、ワクチンによる免疫が時間とともに低下する可能性が示唆されている。
次ページ > 米国の未来を示す英国の現状

翻訳・編集=出田静

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事