米国では9月上旬以降、1日の新規感染者数が減っている。しかし英国の状況は、米国にとって不吉な前兆だ。英国では、デルタ株による感染の波が7月中旬から下旬にかけて減り始め、高い水準で停滞した。それが現在は、再度上昇している。
このような推移の原因については不明だが、新たに出現したデルタ株の亜系統「AY.4.2」が一因であるとのうわさが広く共有されている。AY4.2は、英国などで増えているようだ。
また、英国でデルタ株による感染の波が再燃している背景として、ウイルス拡散を防ぐための薬剤を使用しない初歩的な予防策が明らかに無視されていることが一因となっている可能性が高い。
英国では欧州の大部分と異なり、コンサート会場やレストラン、その他施設に入る際の「グリーンパス(ワクチン接種や陰性の検査結果などの証明書)」制度の活用が限定的だ。人で混み合った屋内での交流があり、マスクの着用が比較的少ない大規模イベントも多い。こうした要素が感染者数の増加につながると考えることは理にかなっている。
米国では英国と同様、新型コロナウイルスの防止策が惨めなほど欠如し、ワクチン接種率も低い。米国では、65歳を超える年齢集団でワクチン接種を完了した人の割合は82%と、英国より14パーセントポイント低い。季節が変わり気温が下がることを考慮すると、デルタ株再興の要素がそろっている。
コリン・パウエルの死は、高齢者や免疫不全の人など感染リスクの高い集団が、たとえワクチンを接種していたとしても新型コロナウイルス感染症の危険にさらされていることを示すものだ。
パウエルの死は、リスクがある人は新型コロナウイルス感染症のワクチン追加接種をできる限り早く受けるべきという注意喚起になるべきだ。(編集注:米疾病対策センター(CDC)は、免疫力が低下している人に対してワクチンの追加接種を推奨している)
追加接種を受けたとしても、高齢者や免疫力が低い人の間で十分な免疫反応を引き起こすことは難しいかもしれない。そのため、多くの感染者が出ていて冬に再び感染が広がる可能性がある現在、全員がウイルスにさらされる可能性を減らすために感染率を下げることが必要不可欠だ。
これは同時に、リスクが高い人をより効果的に守るため常識的な感染抑制措置を設けつつ、人口全体のワクチン接種率を改善する必要性を示唆している。