NYの人材に注目するグーグル
グーグルは、ニューヨークの巨大な人材プールを理由に、現地での活動を強化しており、先月は、ニューヨークでさらに2000人を雇用し、現地の従業員数を1万4000人に増やす計画だと発表した。
ニューヨーク州の副会計監査官のRahul Jainは、最近の不動産のメガディールは、グーグルが有り余る現金を持ち、他に使う場所がないことに起因していると語る。グーグルの親会社のアルファベットは、4月時点で1350億ドルのキャッシュを保有しており、6月30日時点で560億ドル近い不動産を保有していた。同社の不動産ポートフォリオには、ロンドンのキングスクロスにある10億ドルの新社屋や、世界中のデータセンターが含まれるが、マンハッタンの保有物件は、相対的に見て少ないと言える。
グーグルは、パンデミックの中で、これまで2度にわたりオフィスの再開を延期したが、来年1月に従業員がオフィスに戻ることを求めると発表した。これは、オフィスの再開を無期限に延期しているマイクロソフト、アマゾン、セールスフォースとは異なるアプローチだ。
ブルームバーグ市長がITセクターを強化
ニューヨークでは2000年代に入ってから、マイケル・ブルームバーグ市長のもとで、ハイテク分野への取り組みが本格化した。データ・金融情報会社のブルームバーグは、その当時のニューヨークで最大のハイテク企業で、市長は市の金融セクターへの依存を解消することを誓い、2011年にはコーネル大学が20億ドルを投じたルーズベルト島のテックキャンパス化計画にゴーサインを出した。
これらの取り組みは、ハイテク業界と金融業界の両方に強い影響を与えた。今月、会計検査院が発表したニューヨーク市のオフィス利用に関する報告書によると、1990年から2020年の間に、金融セクターのオフィス占有率は、市の全オフィススペースの48%から35%に低下した。一方で、TAMIセクター(テクノロジー、広告、マーケティング、情報関連企業)が、ニューヨークの賃貸オフィス物件に占める割合は、16%から25%に増加した。
しかし、すべての指標がハイテク産業の成長を示しているにもかかわらず、1つの重要な指標には手が届いていない。それは、賃金の上昇だ。会計検査院によると、金融業界の社員の平均給与は43万8000ドルで、テクノロジー業界の19万5000ドルを大きく上回っている。
しかし、テクノロジーセクターは、ニューヨークで最大の経済生産高を誇る金融サービスに迫っている。調査企業Emsiのデータによると、2015年から2020年にかけて、ニューヨークの市内総生産に占める情報産業の割合は10%から13%に増加したが、金融サービス産業(保険会社を除く)の割合は18%から19%というわずかな増加にとどまっていた。
また、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのニコラス・エコノミデス教授は、ハイテク企業の多くがニューヨークの外に拠点を置いているため、これらのデータが実態に沿っていない可能性を指摘した。
エコノミデス教授は、「ニューヨークで、テクノロジー分野が金融サービス分野を追い抜く日は迫っている。10年後には必ずそれが実現する」と述べた。