「不運」の姿をした幸運 [田坂広志の深き思索、静かな気づき]


読者は、その棚卸しによって、いかなる逆境をも肯定的に受け止め、それを超えていく力、「人生の解釈力」と呼ぶべき力を身につけることができるだろう。
 
この「解釈力」とは、人生で、いかなる苦労や失敗や挫折が与えられても、それを、

「この苦労は、何を学べという天の声なのか」

「この失敗は、どう成長せよという声なのか」

「この挫折は、どの道を歩めという声なのか」

と前向きに受け止め、その逆境を肯定的に解釈する力のことである。

そして、実は、この「逆境を肯定的に解釈する力」、それこそが、「不運」に見える出来事を「幸運」へと転じていく力に他ならない。
 
一方、我々に、その「解釈力」が無ければ、人生の逆境を前に、「なぜ、こんなことが起こったのか」「なぜ、こうした不運が降りかかったのか」「なぜ、自分は、いつも不運なのか」といった後向きの想念、否定的な想念に心が支配され、目の前の問題に正対して取り組む力は生まれてこない。

もし、我々の人生が「大いなる何か」に導かれているのであれば、人生で与えられる様々な出来事には、すべて、深い意味がある。「解釈力」とは、その意味を考え続ける力に他ならない。
 
そして、我々が、この「解釈力」を身につけ、どこまでも深めていくならば、いつか、次の言葉が真実であると感じる日が来るだろう。

人生で起こること、すべて、良きこと。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Council元メンバー。全国6900名の経営者やリーダーが集う田坂塾・塾長。著書は『運気を磨く』『直観を磨く』『知性を磨く』など90冊余。

文=田坂広志

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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