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2021.10.21 06:30

スキャンダル塗れの「ニコラ」が復活の兆し、大型契約を連発

(c)NIKOLA

水素燃料電池トラックの開発を手掛ける「ニコラ」の株価は、2020年6月の上場以来、ジェットコースターのように乱高下している。同社の株価は、上場直後に高騰したが、昨年9月に創業者のトレバー・ミルトンが投資家に虚偽の説明をしていた疑惑が浮上したことを受けて急落した。ミルトンはその後、同社の会長を辞任したが、司法省は今年7月に彼を詐欺罪で起訴した。

しかし、同社はCEOのマーク・ラッセルのもと、2021年に入ってから他社とのパートナーシップを次々と締結し、巻き返しを図っている。ニコラは先日、ペンシルベニア州本拠のPGT Truckingに、燃料電池トラックを供給する契約で基本合意に至ったと発表した。実現すれば、ニコラにとって1年振りの大型契約となる。

ニコラはまた、カナダのパイプライン運営会社TC Energyと水素燃料ハブを共同開発すると発表し、再生可能天然ガスを供給するOPAL Fuelsとの契約も結んでいる。さらに、4月には商用車メーカーのイベコおよび、天然ガス供給会社OGEと提携し、欧州で水素パイプラインを構築すると発表した。

「悪いニュースが津波のように押し寄せたが、ニコラの事業は安定しつつある。同社はこの6カ月間で立て続けにパートナーシップを締結しており、その取組みは称賛に値する」と、ウェブドッシュ証券のアナリストのダン・アイブスは述べ、ニコラの投資判断を「ニュートラル」とした。

ニコラ創業者のミルトンは、イーロン・マスク率いるテスラのような革命児としてニコラを宣伝し、水素燃料電池トラックで業界に革新をもたらそうとした。彼は、辞任する前まで、ピックアップトラックやゴミ収集車、全地形対応車、船などセミトラック以外の分野への参入にも意欲を燃やしていた。

しかし、ミルトンの退任後にCEOに就任したラッセルは、これらの新規事業を全て廃止してセミトラックの「Tre」と「Two」の製造に専念し、PGTやアンハイザー・ブッシュなどの顧客への供給体制の構築に努めてきた。

ラッセルは、2021年末までにドイツのウルムにあるイベコの工場で数十台のTreトラックの生産を開始できるとしている。2022年には、さらなる量産化に加え、アリゾナ州クーリッジに建設した新工場で電動版Treの生産を開始する計画だ。

アンハイザー・ブッシュは、ニコラに水素燃料電池トラックを800台を注文しており、初回の納車を待っている段階だ。ニコラは、アンハイザー・ブッシュよりも発注台数が多い顧客が他に存在すると述べているが、その企業名を公表していない。
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編集=上田裕資

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