アップルのイヤホンが受け継いできた憧れの色
AirPodsの歴史は今から20年前に誕生したアップルのポータブルオーディオプレーヤー「iPod」に同梱されたイヤホン「EarPods」に始まる。
当時のオーディオ用イヤホンといえばポータブルオーディオプレーヤーの付属品が多く、また筐体の色もブラックが主流だった。アップルの「派手な白いイヤホン」は驚きを持って受け止められたが、2000年代からはiPhoneにも同梱されたことでユーザーが爆発的に増え、白いイヤホンを身に着けながら音楽を楽しむ人々の姿が町中にあふれた。
iPodやiPhoneに同梱されてきた有線イヤホンのEarPods。現在は別売オプションとしてLightning接続のEarPodsが販売されている
日本ではスマホを買うときに通信事業者が提供する端末購入サポート割引きも利用できたが、海外ではiPhoneが高価なデバイスだった。自身がiPhoneのオーナーであることを周囲に誇れるアイテムとしても、同梱品である白いイヤホンは人気を博した。特別にステータスの高いガジェットとしての価値は、2016年に初代のモデルが発売された左右独立型のワイヤレスイヤホン「AirPods」にも受け継がれた。
アップルにとっては、近年のiPhoneやiPadのようにAirPodsの色を拡大することはたやすいはずだ。にもかかわらずアップルのイヤホンを象徴する「シグネチャーホワイト」の1色にバリエーションを絞ることにより、AirPodsはユーザーのステータスや感性を象徴する憧れのアイテムとして価値をまとうことになる。
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筆者のまわりにもiPhoneユーザーならばAirPodsを選ぶのが常識と言わんばかりに、他のイヤホンを吟味せずにAirPodsを買ったという知人も大勢いる。日本には元からiPhoneユーザーが多くいることから、必然AirPodsの販売も伸びる。これほどまでにシンボリックな価値を持つイヤホンは、年間に数百台近いイヤホン・ヘッドホンを取材のため試しているオーディオライターでもある筆者が知る限り他にないと思う。