ビジネス

2021.10.27

「ブランディングよりブランデッド」の時代にDXが果たす3つの役割


楠木は、ブランドはあらゆる商売で重要としながらも、ブランディングが目的化している企業が多いと危惧。「ブランディングより“ブランデッド”が重要」とも口にし、安易な手法への警鐘もならした。

「ブランディングとブランデッドは人気と信用の違いとも言え、人気は一気に盛り上がるかもしれないが、いずれなくなるかもしれない。信用はこれまでのありとあらゆる顧客経験が積み重なって生まれる。デジタルの時代では、“手っ取り早くうまくやる”手法は多い。ただ、そのやり方が曲がり角を迎えているのではないか。

“すぐに役立つものほど、すぐに役立たなくなる”とは、商売において鉄板の法則だと思う。実際にブランドの強い会社はいくらでも思いつくが、どれもブランディングだけで作られたわけではない」



イナモトは楠木の意見に同調し、ニューヨーク大学スターン経営大学院の教授であるスコット・ギャロウェイの「コロナによってブランドの時代は終焉を迎えた」という意見を紹介。“信頼の時代”への突入を予想した。

「今までは中途半端な商品でもイメージをよくすることで売上を上げることができたが、デジタルの浸透によって物事の価値が透明化されて問われるようになった。今後は人気の先にある信頼をいかに得られるかが、ブランドや企業のあり方で最も重要になるはず」

社内DX、社外DX、「文化のDX」


では、新時代に必須となる信用・信頼を、企業はどうすれば培うことができるのか。あらゆる生活のタッチポイントがデジタル起点となろうとしている時代だからこそ、DXに活路が見出せそうだ。

DXには、デジタルツールを使用することで業務を効率化する社内向けと、デジタルによって顧客体験を向上させる社外向けの2通りがあるとされる。

楠木は、社内DXは「効率がよくなるから、単にやればいいだけ」と断言。社外DXについては、「BtoCでもBtoBでも顧客と直接つながれ、やり取りの頻度も増える。相手のリアクションもデータとしてたまり、やり方次第で顧客の信頼も得られる」と、その重要性を説いた。

しかし、中途半端な取り組みでは、その姿勢が取引相手にもすぐさま露見してしまう。「中身があれば、やり取りの頻度が多くなると信頼も高まっていくもの」として、顧客とのタッチポイントが増加するからこそ、企業の本質が試されるとした。
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文=小谷紘友

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