理由は、コロナ禍で非接触型の支払いが好まれるようになったためである。とくに飲食の分野では、使い捨ての紙メニューにかけるコストを厭い、QRコードを使用したペーパーレスメニューに切り替えるレストランが増えたことも大きい。
駐車スペースで「外食版のウーバーイーツ」
米国の一般大衆紙「USAトゥデイ」によれば、店内での飲食が制限されたコロナ禍で、フードコートの「パール・ブリュワリー」は、店外の駐車スペースを「バーチャル・レストラン」として開放。ここにQRコードを用意したテーブルを並べ、メニュー閲覧、注文、そして会計までを一気通貫で行えるシステム「bbot.menu」を採用した。
店側が料理を運ぶのは、客のテーブルから少し離れた脇までで、言わば「外食版のウーバーイーツ」ともいえるシステムだが、なんといってもフードコート内の複数の店へのオーダーを1度で済ませることができ、料理もまとめて運んでもらえることが利点だ。もちろん客には好評で、パール・ブリュワリーはコロナ禍にもかかわらず新たに4つの店舗をオープンさせたという。
「bbot.menu」のトップ画面。「料理と飲み物のご注文はここから テーブルのナンバーカードにあるコードを下のボックスに入力してください(または、お手元のQRコードをスキャン)」とある。
また、米国の飲食専門メディアである「ナショナル・レストラン・ニュース」によると、ナショナルチェーンレストランとゴーストキッチンを経営する「C3」が立ち上げたデリバリープラットフォーム「GO by Citizens」も人気だという。
GO by Citizens は、中食版の「bbot.menu」ともいえる。家やオフィスに居ながら、複数のレストランを横断した注文が1度で済むのだ。巨大フードチェーンであるC3の傘下には、実に200のゴーストフードホール(イートインスペースを持たないデリバリー専門の店舗)、店舗を持つレストラン、空港の飲食店などがあるので、注文の選択肢は実に幅広い。そういう意味でGO by Citizens は、ウーバーイーツの競合にもなり得るプラットフォームかもしれない。
「GO by Citizens」の画面
「コロナ禍終息後もQRコードは使う」
飲食業界には、「コロナ禍が終息すれば、店外で受け取るコロナ仕様のテイクアウトや、テーブルでQRコードにスマートフォンをかざして注文するスタイルはいずれ廃れる」とみる向きも多い。
しかし、12以上の超人気リゾート施設と数百のレストランを運営するラスベガスの「MGM Resorts」の広報担当であるジャン・マイケルズは、「コロナ禍終息後もQRコードをメニューに使い続ける予定だ」とUSAトゥデイ紙に語っている。
米国においては、外食のみならず、コロナ禍で市場を驚異的に伸ばした「中食」の分野でも、「〜抜き」や「〜増量」といったカスタマイズやオプションが、オンライン注文で簡単にできるようになったという。
また、パンデミック前とは異なり、店内に入らなくてもテイクアウトできることは、やはり消費者にとってはアドバンテージだ。さらにピックアップの時間も指定できるから、できたての料理を受け取ることができるのも利点だ。
そんなメリットを享受し続けたい消費者を、中食分野でも外食分野でも、店側は無視できないかもしれない。
関連記事:日本発テクノロジー「QRコード」、コロナ禍の米国で再ブーム