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左:ベイカレント・コンサルティング デジタル・イノベーション・ラボチーフエバンジェリスト 八木典裕 / 右:ベイカレント・コンサルティング常務執行役員CDO 則武譲二

DXの真価は、「顧客体験(CX)」と「社員体験(EX)」が相乗効果を生み出すことで発揮されると主張するベイカレント・コンサルティング。同社のデジタル・イノベーションにおけるキーマンふたりに、CXの要諦とそれを向上させる方法について話を聞いた。


デジタルトランスフォーメーション(DX)はいまや企業にとって避けて通れない取り組みだが、単なるデジタルツールの導入にとどまっている企業は少なくない。ベイカレント・コンサルティングは、DXを「デジタルテクノロジーを活用し、従来のやり方を抜本的に変革すること」と定義しており、「顧客体験(CX)」と「社員体験(EX)」を進化させ続ける取り組みが必要だと言う。同社の常務執行役員でデジタル・イノベーション・ラボ室長の則武譲二とチーフエバンジェリストの八木典裕に、その詳細について語ってもらった。

CXとEXの相乗効果で高まる


―さまざまな業界でDXが叫ばれていますが、言葉だけがひとり歩きしている印象を受けます。DXの本質とは何でしょうか。

八木典裕(以下、八木):DXとは抜本的な変革であり、デジタル活用で少々変化した程度ではDXと呼びません。抜本的な変革を実現するためには、まずは変わることをよしとする社内の「マインド変革」から始めるべきでしょう。

そして、ビジネスモデルを変革するためにはCXの向上が欠かせません。“真のCX”とは顧客の期待を超えた高付加価値なサービスを提供することであり、それを実現するためにはEXを向上させることも不可欠となるのです。なぜなら、顧客が感動するほどの体験をしているとき、そこには自社のビジネスに誇りをもった社員の姿があるはずだからです。つまりDXとは、「CXとEXを相乗効果によって進化させていくこと」とも言えるのです。

―その相乗効果を実現するにはどうすればよいのでしょうか。

八木:まずは、オペレーション変革をいかにEX向上につなげていくかです。チリの国営鉱山企業コデルコは好例で、採鉱や金属加工などの仕事を自動化することによって社員の余剰パワーを創出しました。体を使う仕事から頭を使う仕事に変わった社員のモチベーションは向上し、さまざまな改善の意見が現場から出るようになったのです。

社員が自発的に改善案を考えるようになると、担当している仕事に“パッション”が込もるようになります。このパッションをもって、顧客のためにすべきことを考えるようになると、顧客への提供価値が高まっていくのです。

則武譲二(以下、則武):ただし多くの日本企業はまだ、CXとEXの相乗効果を起こすための準備すら整っていないと言えます。私はよくクライアントにカスタマージャーニーを描いていただくのですが、ほとんどの方がこれまでのサービスをもとに描かれます。しかし、それは自分がこれまで経験してきた枠のなかでしかありません。まずは自分たちが提供しているサービス以外のプロセスも含め、自分自身で一連の体験をしてみて、顧客をより深く理解したうえで分析することが大事です。顧客の深層理解が感動を生み、顧客からの感謝がEXを高める。そうやって相乗効果が強まっていくのです。

―一朝一夕にはCXとEXの相乗効果は実現できないということはわかりましたが、そもそもCXの本質とは何でしょうか。

則武:まずCXには4つのパターンがあり、「だよね」「あれ?」「さすが」「まさか」といった顧客の反応で分けられます。「だよね」はサービスとして定着して手放せないもの、「あれ?」はふとした瞬間に価値に気づくものです。いわば両者は「サービスの定番化」と言えます。一方、「さすが」は高い期待に応えること、「まさか」は顧客の想像を超えるほどの高付加価値なサービスを提供することを意味します。

現状、顧客から支持されているサービスであっても、CXは時間の経過とともに低下していくのが普通です。それを防ぐためのアプローチが「定番化」と「さすがとまさかのCX」を組み合わせることなのです。

―そのためには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。

八木:デジタルの活用によって「リアルタイム性」と「One to One」のサービスを追い求めていくことが必要です。例えば百貨店の店内にはカメラが設置されていますので、顧客のリアルタイムの動きを把握できます。これを利用すれば、一人ひとりのニーズに即座に応えるサービスを提供できるようになるでしょう。アパレル店の店員は、百貨店内での顧客の行動を把握したうえで、先回りして高品質なサービスを提供することができるようになるのです。



高次元のCXを実現するには「突き抜けた目標」が必要


―デジタル技術が発達していながら、それらをしっかりと実践できている企業は多くありません。

八木:「顧客視点」というキーワードは、多くの企業が重視するようになっています。ところが「顧客起点」にはなりきれていない。つまり、「自社起点」で顧客のことを考えているケースがほとんどなのです。なぜ顧客起点になれないかというと、顧客を理解していないことも一因ですが、自分たちのサービスや商品を売りたいという思惑が先にあるからです。

則武:日本で顧客起点の考え方が浸透しはじめている例として、損害保険業界があげられます。これまでのCXは、事故が起きてから保険金を支払うまでの体験にフォーカスしていました。それがいまは拡張し、事故が起きないようにするためにはどうしたらいいか、起きた後に何を支援できるかを考えるようになっています。これからは自社商品やサービスを前提としたCXから脱却し、生活者の一連の体験を起点に考えることが求められるようになってきているのです。

八木:そのためには余剰パワーを使って創意工夫を考えていくことが重要です。ところが残念ながら、ほとんどの企業ではそれができていません。生産性を高めることで余剰パワーが生まれても、それをどう生かすかまでは考えられていないのです。

―そうした状況を改善するためにはどうすればいいのでしょうか。

則武:我々は「突き抜けた目標」と言っていますが、これまでの延長線上にはない高い目標を設定することがひとつのショック療法になると思います。カーボンニュートラルがいい例です。多くの企業はCO2削減についてそこまで真剣には考えていませんでしたが、とてつもなく高い目標が打ち出されたことによって、取り組みが本格化しました。高い目標を達成するために本気で挑めば、生産性の向上で得られた余剰パワーをフル活用するようになります。そうして一つひとつの小さな目標をクリアしていくことで、やがて大きな目標を達成できるようになっていくのです。




則武譲二◎ベイカレント・コンサルティング常務執行役員CDO。DX戦略の策定、新規事業の立ち上げ、マーケティング・営業改革などのテーマに従事。著書に『戦略論とDXの交点』(共著、東洋経済新報社)、『データレバレッジ経営』(共著、日経BP)などがある。

八木典裕◎ベイカレント・コンサルティング デジタル・イノベーション・ラボチーフエバンジェリスト。DX戦略立案、デジタル人材育成など、デジタル関連の多数のプロジェクトを主導。著書に『DXの真髄に迫る』(共著、東洋経済新報社)などがある。


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Promoted by ベイカレント・コンサルティング / text by Fumihiko Ohashi / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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