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2021.10.19

米国で人気の高級食用キノコ、急成長の栽培企業が約28億円調達

NZ3 / Shutterstock.com


代替タンパク源の製造を手がけるスタートアップは、ここ数年で投資家から数十億ドル規模の資金を集めており、それに比べれば、キノコ栽培企業が集める資金は、ごくわずかなものだ。それでもピッチブックによると、2020年にキノコ関連スタートアップが調達した資金の総額は、これまでで最高の1億ドルに達した。2021年はさらにこれを上回る勢いだという。

食用キノコには大きな市場が広がっている。主にペンシルベニア州に拠点を置くU.S.ファームズ(U.S. farms)は、年に12億ポンド(約54万4000t)のキノコを生産しており、その大部分がホワイト種のマッシュルームだ。

一方、スモールホールドはシリーズAラウンドで調達した資金を活用し、事業を西海岸に広げる考えだ。同社は2021年1月以降、500%以上というペースで増産を続けてきた。そのなかで、キノコ工場の建設にかかる時間の短縮に成功し、今ではわずか6カ月で施設の稼働が可能になった。現在、スモールホールドの工場はブルックリンに1カ所、テキサス州に2カ所の計3カ所だが、2022年にはロサンゼルスに4つ目の工場がオープンする予定だ。

2017年にアンドリュー・カーターとアダム・ディマルティーノ(Adam DeMartino)によって創業されたスモールホールドは当初、ストレージコンテナの企業として、ブルックリンで産声をあげた。だが、バーモント大学の学生の頃から友人だった創業者の2人は、すぐにキノコ栽培システムの販売に業態を転換した。

これは、特許取得の技術を活用し、電源につなぐだけでレストランや食料品店で栽培が可能なシステムで、ブルックリンのゴーワヌスにあるホールフーズの店舗などに導入された。

新型コロナウイルスのパンデミックに加え、急増する需要を目の当たりにしたスモールホールドは、増え続ける食料品チェーンからの注文をさばくために、より大きな工場でキノコを栽培する方法を考案した。

今では、食料品店やレストラン向けのミニ栽培システム販売が、スモールホールドの事業全体に占める割合はすっかり小さくなった。それでも、これらのシステムを導入したテキサス州の食品チェーン「セントラル・マーケット」では、所有する3店舗に、スモールホールドの独自技術を用いたミニ栽培システムが置かれている。これらの店舗を訪れた買い物客は、キノコが育つ様子を見たり、成長したキノコを自らの手で収穫したりすることができる。

2020年3月から始まったコロナ禍により、スモールホールドはレストラン顧客の大半を失ったが、この分野もその後は持ち直している。今では、米国でも最も評判の高いレストランのメニューにその名が載るまでになった。ニューヨーク市ではEleven Madison Park、Maison Yaki、Olmsted、テキサス州オースティンではUchiといったレストランだ。

2022年にカリフォルニア州での本格展開を控え、同社のキノコを使用するレストランのリストは長くなる一方だろう。テキサス州やカリフォルニア州では、今でもペンシルベニア州や国外からキノコを取り寄せている状態だとカーターは述べる。

「キノコの消費量が増えるほど、そのぶん他の食材の消費量は減る」とカーターは指摘する。「可能な限り速やかにキノコ工場を建設し、当社のキノコをできるだけ多く出荷する。それが最も重要だ」

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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