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2021.10.20

なぜVCは起業家に、他のVCとのやり取りのことを聞くのか?

近年成長しているVC業界ですが、それでもプレイヤーの数はまだ少なく、必然的に業界内はお互い知っている顔ばかりです。このような狭い業界なので、投資候補のスタートアップを他のVCがどう評価しているか知りたがるVCも多く、本格的に投資を検討するかどうか判断する際にそういった情報を考慮する可能性もあります。

ではどうやってその情報を入手するかというと、単純に起業家への質問を通して探りを入れるのが1つの方法です。そのため、資金調達中もしくは資金調達を考えている起業家であれば、どの質問で「探り」を入れられているか察知できるようになっておいたほうが良いでしょう。

例えば、VCから以下の3つのような質問を聞かれるかもしれません。

「これまでにどれくらい資金調達をしましたか? そのときのバリュエーションはいくらでしたか?」


過去の資金調達額やバリュエーションについてVCから聞かれることは多いと思います。それらの情報は、実はVCにとっていくつもの判断に役立ちます。

1つ目は、単純にVCの投資戦略にマッチするスタートアップであるかどうかについての判断です。そのVCが考えている投資上限額が5億円で、15〜25%の出資割合を目標としている場合、60億円のバリュエーションが付けられるようなスタートアップは投資ターゲットとして適切ではないと判断されるかもしれません(たとえそれがどんなに有望なスタートアップであったとしても、です)。

また、前回の資金調達ラウンドのバリュエーションが高すぎたかどうかについても判断できます。もともとVCが想定していたバリュエーションが、前回のラウンドに比べて低いか同程度であった場合、それ以上なにか懸念事項に言及するようなこともなく投資を断られてしまうケースもあるでしょう。同じ評価額(フラットラウンド)もしくは低い評価額(ダウンラウンド)での資金調達は、スタートアップにとってむしろマイナスの効果になる上に、スタートアップや既存投資家に対して失礼ですらあると考えるからです。

それに加えて、フラットラウンドやダウンラウンドは、経営チームの持ち分を必要以上に希薄化し、将来的に起業家と社員の間でインセンティブの方向性がミスマッチしてしまう状況につながる可能性もあるのです。
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文=James Riney

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