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2021.10.22

室内に本物の海が誕生? 「海のIoT」がビジネスになる時代

起業家 高倉葉太


──サンゴの人工産卵に挑戦中だ。

研究開発型ベンチャーは、成果をわかりやすくアウトプットしないと理解されにくい。そこで完全に人工的な環境下でのサンゴの産卵に挑戦しました。成功すれば世界で3例目です。20年は抱卵までいきましたが、産卵は失敗。今年も挑戦しましたが、機材トラブルでサンゴの健康が悪化。実験に至りませんでした。現在は24時間体制でアラートが飛ぶ仕組みをつくったり、複数の水槽で同時に実験するなど、次に備えて対策をしています。

──ビジネスとしての将来性は?

脱炭素の次にくるテーマが生物多様性です。気候変動問題では、企業にCO2排出量などの開示を求めるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言が浸透してきました。

実はいま、生物多様性においてもTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)を策定する動きが活発化しています。将来、自社の活動が生物多様性に与える影響を定量的に評価して、IRで開示する時代がやってくることは間違いない。カーボンオフセットのように、生物多様性への負荷を取引する仕組みもできるでしょう。脱炭素が巨大なマーケットになったように、生物多様性も大きなビジネスになっていくのでは。

──今後10年以内に実現したい人生の目標は?

サンゴから発見された物質から抗がん作用が確認されるなど、海洋にはまだまだ可能性があります。そうしたイノベーションが、イノカがつくった人工の“海”から生まれてくる状況にもっていきたいです。


たかくら・ようた◎1994年、兵庫県生まれ。東京大学工学部卒業後、AIや機械学習の研究に携わる。ハードウェア開発企業の設立を経て、2019年にAIとIoTで生態系を再現するイノカを創業。

文=村上 敬 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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