自傷行為の発見例も、オンライン監視を行う米国の学校支給PC

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米国メリーランド州ボルチモア地元紙の「ボルチモア・サン」が10月12日付で報じたところによると、同市の教育組織が貸し出すノートパソコンに監視ソフトウェアがインストールされた2021年3月以降、公立学校に通う生徒9人が、自殺を考えているとソフトウェアにより判定され、医療機関に送られた。その一方で、学校支給のパソコンで生徒の活動を追跡することに関しては、プライバシーや公平性をめぐって全米で議論が巻き起こっている。

パンデミックのさなかにオンライン授業用に生徒に貸し出されたノートパソコンは、ゴー・ガーディアン(GoGuardian)製のソフトウェアを搭載している。このソフトは、自傷行為をするおそれがあることを示す徴候を監視するものだと、ボルチモア・サンは伝えている。

同紙によれば、この監視ソフトは3月以降、ボルチモアで780件近いアラートを学校に報告している。うち9件では生徒が救急処置室に送られ、別の12件では危機対応センターに送られたという。

ソフトウェアからアラートがあった後、校内精神医やソーシャルワーカーに連絡がつかない場合は、スクールポリス(校内警察)が生徒の様子を確認しに行く、とボルチモア・サンは伝えている。

ゴー・ガーディアンのソフトウェアを使えば、生徒の実行するクリックや検索のほぼすべてを教師が監視できる。また、ボルチモアの公立学校で使われているとAPが報じた同社製品のひとつ「ビーコン(Beacon)」は、同社サイトによれば、生徒がノートパソコン上でしていることをリアルタイムで「ひそかに分析」するという。

テクノロジー政策関連の活動を行っている非営利団体「民主主義と技術のためのセンター(CDT)」が2021年9月に発表した調査によると、低所得世帯の生徒ほど、学校支給の端末を使う傾向が高いため、オンラインでの活動を監視されやすいという。

CDTの調査によると、「ソフトウェアがインストールされた学校支給の端末を使う生徒を監視している」と回答した教師は、およそ10人に7人に上った。それに対して、「個人所有の端末を使っている生徒を監視している」と答えた教師は10人中2人足らずだった。

パンデミックが始まった当初、全米の学校がノートパソコンなどの電子機器を生徒に支給し、生徒たちがオンライン授業に確実に参加できるようにした。CDTの調査によれば、自分の勤める学校が、パンデミック中に学校支給の電子機器を提供したと答えた教師は、10人中9人近くに上る。これは、パンデミック以前と比べて2倍にあたる。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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