ビジネス

2021.10.20

G-SHOCK、累計出荷数1億3000万。「190万通りのカスタマイズ」で狙う先は?

写真:カシオ計算機


1996年大ブーム当時の時計商、曽根康司氏は──


メーカーはなぜここまで豊富な「自分仕様」の可能性をゆるしたのか。今回のカスタマイズサービスについて、キャリアインデックス(東証一部)執行役員の曽根康司氏に聞いてみた。

曽根氏は1990年代、原宿と下北沢で時計店を経営したのち、海外から仕入れた時計を時計店などに卸す「時計商」を営んだ経験を持つ(1996年大ブームだったCasio G-Shockの仕入れの経験について振り返る曽根氏の記事:「余るマスク」に思う、需要の天井と90年代のG-Shockブーム )。

「以前から定番モデルに加工を施したモデルはノベルティ等で存在していました。また、パーツを組み合わせて作る、いわゆる改造モノもありましたが、今回はメーカー公認でカスタマイズ可能にした点はすごいですね。何せ組み合わせ数が膨大なので、サプライチェーンの構築は大変だったように思います。

一方、マーケティング視点で言えば、顧客が好みでカスタムできることは、スニーカーをカスタムできるNIKE id(By You)や BMWの内外装を自由に選択できるインディビジュアル・オーダー等の流れを汲んだものとも言えそうです。顧客の嗜好が多様化したのなら、顧客をセグメントするのを諦めて、自由に作ってもらったほうが合理的といった塩梅でしょうか。


キャリアインデックス執行役員 曽根康司氏

あと、これはメーカー側がどれだけ意識しているか分かりませんが、カスタマイズサービスはネットオークションなど、アフターマーケット(中古市場)での流通を抑制する役割もありそうです。通常、スタンダードなモデルは相場が形成されやすいですが、カスタマイズものはその名の通り『個人の好み』が反映されるので値が付きにくい、すなわち『流通しにくい』傾向があります。

わかりやすいたとえを住宅のカテゴリーから引くなら、『お金持ちの豪邸はオーナーチェンジのたび、建て替えになることが多い』──すなわち、オーナーの好みが色濃く出てしまいがちな『定番デザイン』でない邸宅は、そのままでは買い手がつきにくい──ことと似た原理で、アフターマーケットへの流出が防げるかもしれない、ということです。

ですから、カスタマイズに応えることは、中古流通を適度に抑制し、新品流通の割合を担保できるというビジネス面での合理性が、あるいは読み筋に入っているのかも知れません」

構成=石井節子

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