シネマの女は最後に微笑む

(c)2014 Crow's Nest Productions

最近、東京などの大都市周辺にサルやイノシシといった野生動物が現れたというニュースをよく聞く。増え過ぎた個体が食べ物を探して河川敷の緑地帯などを下っていくうちに、都市に辿りついてしまうようだ。パニックになった野生動物が人を襲うことも考えられるため、捕獲して山林に返されるのが常である。

一方、イギリスでは野生動物を復活させる計画が支持されているという。といってももちろん街にではなく、開発などで国内から姿を消してしまったオオヤマネコやオジロワシやビーバーなどを、それぞれ元いた田園地帯に呼び戻すということらしい。

街中の自然にも手を加え過ぎず、雑草などもある程度は伸ばして鳥類の餌を確保する。自然の状態を生かした庭、イングリッシュ・ガーデンを生んだイギリスらしい発想だ。

『フラワーショウ!』(ビビアン・デ・コルシィ監督、2014)は、英国王立園芸協会主催のチェルシー・フラワーショウ2002年大会で、かつてない「雑草の庭」を創出して優勝し、ガーデニング界に新風を巻き起こしたメアリー・レイノルズの実話ドラマである。ざっとあらすじを見ておこう。

1974年、アイルランドの田舎で生まれ自然に親しんで育ったメアリー(エマ・グリーンウェル)は、ガーデン・デザイナーを目指してダブリンに上京、著名人を顧客に持つ造園家シャーロットのアシスタントになる。

シャーロットの豪華絢爛なデザインに次第に違和感を覚えていた頃、メアリーは初めて行ったロンドンのチェルシー・フラワーショウで出会った植物学者クリスティ・コラード(トム・ヒューズ)と意気投合。クリスティはエチオピアの緑化や灌漑に力を注いでおり、メアリーと深いところで価値観を共有できる人物だった。

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(c)2014 Crow’s Nest Productions

シャーロットに自分のデザインノートを盗まれお払い箱になったメアリーは、一念発起してフラワーショウの応募資格を得るものの、どうしてもクリスティの協力が必要だと思い定め、彼を追いかけてエチオピアに赴く。

さまざまな苦労を乗り越え、人々の協力を得て、ようやく長年温めてきた野草とサンザシの樹と石の庭が完成、メアリーは初出場にして28歳という史上最年少で金賞を勝ち取る。

描かれるのはさまざまな「対立軸」


このドラマには、さまざまな対立軸が見られる。まず、メアリーの理想とする自然の調和と、シャーロットのつくる絢爛たる人工。

スタイリッシュで目線の高い感じのシャーロットは、田舎から出てきたメアリーの才能をいち早く見抜きながら、デザインの表面だけどんどん自分のものにしていく狡猾な女性として描かれている。

最後のショーでの、コマーシャルに出てきそうなバラのインスタレーションも、いかにもバブリーで金持ち好みの感じ。クローバーやシダが好きなメアリーとは水と油だ。

その次は、英国王立園芸協会という権威と、無名の芸術家の冒険的試みという対比。25万ポンドの出資者がいなければ応募用紙すら送ってもらえないショーに何がなんでもエントリーしようとするメアリーを、友人たちが応援する。出資者に親戚の名前を貸そうと申し出たり、地元のラジオ局の番組に出演しての寄付を応援したり。

世に出る前のメアリーを支えようとする友人たちもさることながら、電話で何度もやりとりする協会秘書の女性を、実にメアリーらしい方法で味方につけるエピソードがピリッと効いている。

文=大野 左紀子

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