ビジネス

2021.10.19

デジタル社会を裏側から支える泥くさい汗


南:私が投資をするうえで大事にしているのは、自分のなかで腹落ちして理解ができるかどうか。本人確認のデジタルサービスを提供している会社は国内にいくつかあるんですが、そのほとんどはツールの提供にとどまっています。

サービス事業者側で行う本人確認書類の突き合わせ作業といったバックオフィス業務や、反社チェックなど周辺の業務を含めて、TRUSTDOCKが一気通貫で24時間365日のサービスを展開していることは大きな強みだなと。

経営メンバーの皆さんとのディスカッションでは、サービスの裏側のアーキテクチャについても詳しく質問しました。TRUSTDOCKには、基盤となる本人確認の業務システムがあるのですが、モジュール単位で細かく構築されていて、その組み合わせによって顧客の要望にノンカスタマイズで対応できるんです。新たな法律ができれば、それに対応したAPIを追加すればよくて、拡張性が高い仕組み。これはすごいぞと、一気に検討が加速しました。

千葉:僕たちが目指しているのは、電気・ガス・水道のような存在。コンセントにつないで電気が流れるとか、蛇口をひねると水が出ることは、当たり前のように思うかもしれないけれど、その裏側には必死に24時間365日、歯を食いしばって頑張っている人たちがいる。何をどうやっているかは知らないけれど、サービス事業者さんがTRUSTDOCKを使うと、本人確認の処理が行われて、しかも法律要件を満たしているといった具合に、デジタル社会の血流を裏側で回すインフラになりたい。

南:千葉さんならなれると信じています。私はスマートなタイプの投資家ではないけれど、優秀な人材の採用、戦略の策定、ガバメント・リレーションの構築の3点を軸に、泥くさくサポートしていきます。


みなみ・りょうへい◎グロービス・キャピタル・パートナーズ インベストメント・プロフェッショナル。慶応義塾大学経済学部卒。米国カリフォルニア大学バークレー校MBA修了。大和証券を経て2018年1月より現職(写真左)。

ちば・たかひろ◎TRUSTDOCK代表取締役CEO。神奈川大学建築学部卒。インターネット関連サービスを手がけるガイアックスでデジタルIDのR&Dを事業化。そこで得られた結果をもとに、2017年に独立し、TRUSTDOCKを創業(右)。

文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.084 2021年8月号(2021/6/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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