アップルが中国の検閲に対抗するための「究極の選択肢」

Kevin Frayer/Getty Images

アップルは先日、中国政府からの要請を受けて、中国の公式アプリストアから、世界中のイスラム教徒に支持されるコーランアプリの「Quran Majeed」を削除した。また、エホバの証人のアプリの「Watchtower Library 2021」や、写真・ビデオ編集アプリの「Picsart」、アマゾンのオーディオブックアプリの「Audible」なども削除されている。

アップルは、人権への取り組みをアピールしているが、「当社は現地の法律を遵守する必要があり、時には政府や他のステークホルダーと意見が合わない複雑な問題にも直面する」と述べている。

マイクロソフトは、リンクトインの中国版を閉鎖することを決定したが、アップルが同様な措置をとることは難しい。なぜなら、アップル製品のほとんどは中国で製造されており、アップルの中国における直近の四半期の売上は200億ドルを超えているからだ。

しかし、アップルには中国政府の検閲に対抗するために、アプリの「サイドローディング」を認めるという選択肢が残されている。サイドローディングとは、公式のアプリストア以外からのダウンロードのことで、グーグルのアンドロイドOS端末では、これが可能になっている。

アップルは先日、「Building a Trusted Ecosystem for Millions of Apps」という論文を公開し、サイドローディングを認めない理由を詳しく説明したが、筆者はあえて、同社にこれを認めることを提案したい。

公式ストア以外からのダウンロードを認めると、アップルの収益が奪われる可能性があり、アップルの厳格な審査を経ていないアプリが流通することで、セキュリティ上のリスクも高まることになる。しかし、この措置によって、アップルは同社が最も重視する「人権」への取り組みをアピールできる。

サイドローディングが許可されれば、中国の抑圧的な政権下にある人々が、政府が禁止するアプリやコンテンツにアクセス可能になり、政府の検閲に対抗できる。また、この措置により、アップルのアプリ内課金の収入や有料アプリの売上の大半が奪われるとは考えにくい。なぜなら、ほとんどのiPhoneユーザーは、今後も公式のアプリスアの利用を続けるからだ。

しかし、これは決して容易な決断ではなく、アップルに大きなコスト負担が生じる可能性もある。

iPhoneでサイドローディングを可能にするためには、プロセスを可能な限り安全にし、悪質アプリを排除するための、大がかりなセキュリティ対策が必要になる。リスクを最小限に抑えるために、サイドロードされたアプリをサンドボックス化されたコンテナで実行することも考えられるだろう。

これは決して簡単なことではなく、膨大なコスト負担が生じるかもしれない。しかし、それが正しい道なのかもしれない。

編集=上田裕資

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