コロラド大学デンバー校の研究チームは、現金が当たるワクチンくじを実施した、ニューヨーク州、メリーランド州、オハイオ州を含む19州を調査し、これらの州での人口1000人あたりのワクチン接種数の変化を、他の州と比較した。
JAMA Medical Journalに掲載された査読前の論文によると、研究チームは、ワクチンくじの実施と接種率の間に「統計的に有意な関連性はない」と述べている。
論文の著者によると、この研究はすべての州をまとめて調査したもので、個別の州では、キャンペーンが成功した可能性もあるという。しかし、全体のデータを分析すると、くじを実施した州と実施しなかった州の接種率の差は、ゼロだったとコロラド大学デンバー校の経済学准教授のアンドリュー・フリードソン博士は述べている。
賞金が当たるワクチンくじは一見魅力的だが、結果が保証されていないため、多くの人に敬遠された可能性があり、直接現金を支払うキャンペーンのほうが、効果的だった可能性があると研究者は述べている。また、このような試みは、多くの人に接種を躊躇させているワクチンに関する誤った情報や信頼性の欠如に対処できないと彼らは指摘した。
「くじ引きは、有益なワクチンのプロモーション戦略とは言えない。接種に関する明確なメッセージに資金を投入する方が、はるかに効果的であった可能性が高い」と、フリードソン博士は述べた。
他のインセンティブの効果に関する有力な研究はこれまで実施されていないが、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は、9月下旬に、100ドルのワクチン接種の報奨金が、接種率向上の鍵となったと述べていた。
このプログラムを開始した後の1週間で、予防接種が40%増加し、数万人の人々が報奨金を手にしたという。テキサス州で最も人口の多いハリス郡でも、同様の100ドルの報奨金プログラムに6万5000人以上が参加し、地元当局から高い評価を得ている。
一方で、成果をあげられていない州もある。ウェストバージニア州では5月から100ドルの奨励金キャンペーンを開始したが、接種数が減少し続けている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)のデータによると、ワクチンを少なくとも1回接種した米国の成人の割合は79%に達しており、接種を完了した人の割合は68%とされている。ホワイトハウスの専門家は、ワクチンの接種率の急上昇はワクチンの義務化によるものだと述べている。