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「鳩スタ」は、スタジアムといっても、人工芝のサッカー場に100人程の仮設の観客席を入れ、立ち見を含めても「収容600人」という小さなもの。しかし更衣室やシャワーなど利用者が使える施設を完備し、夜間も利用してもらえるよう、簡単な照明もつけた。


課題のひとつは人工芝だった。クラブのトップチーム含め100人を超すプレーヤーたちの試合や練習だけでなく、天候に関係なく毎日市民に使ってもらうには、天然芝ではもたない。当然、人工芝でなければならない。

しかしヨーロッパでは、近年人工芝による環境汚染が大きな問題になっている。切れた芝やクッションのために入れてあるゴムチップが河川や海を汚染するためだ。

そこで環境汚染を極力抑える人工芝を開発している会社と協力し、ゴムチップを一切使わず、酷使しても切れにくい最新の人工芝を導入した。何年かして張り替えるときにも廃材にはならず、リサイクルが可能な人工芝だという。人工芝を敷く作業には200人超の支援者たちが参加し、まさに、みんなで完成させた。



また、活動資金を強化するため、ことし7月に「クラブトークン」の発行を開始した。「社会に役立つこと」をするクラブに共感してくれる人びとを広く集め、一緒に夢を実現していこうという新しいチャレンジだ。特典も、みんなとクラブを作っていくプロセスを共に楽しんでもらうという視点で企画している。



住宅が密集する鎌倉を囲む山の北の外に当たる深沢地区は、広々とした空が広がり、晴れた日には富士山がくっきりと見える。その富士山のように、四方さんの頭には「未来像」がカラフルに広がっている。

スタジアムのこけら落としが行われた10月17日は、あいにくの冷たい雨にたたられた。しかし、集まってくれたみんなの笑顔、そしてテストオープン期間中から幾度となく目にした光景から、四方さんは自分の考えが間違っていなかったことを実感した。

「子どもたちが元気に駆け回っているんですよ、ピッチで。自然と、楽しそうに」それは理屈なしに感動的なシーンだった。


「みんなのスタジアム」は早ければ数年でその役割を終えることになる。

しかしそのときには、シンガポールの「Our Tampines Hub」のような本格的なスタジアム建設の計画を多くの市民が望むようになり、鎌倉インテルが大きく成長し、鎌倉という街自体が21世紀の日本に新しい価値をもたらす「未来の街」に変貌していくことを期待したい。



四方 健太郎鎌倉インターナショナルFCオーナー。1979年生まれ、神奈川県横浜市出身、シンガポール在住。立教大学経済学部卒業後、アクセンチュア東京事務所にて、主に通信・ハイテク産業の業務改革・ITシステム構築に従事。2006年より中国(大連・上海)に業務拠点を移し、大中華圏の日系企業に対するコンサルティング業務にあたる。2009年独立後、1年かけてW杯2010年大会に出場する32カ国を巡る『世界一蹴の旅』を遂行し、同名著書を上梓。現在、クラブ経営の傍ら、東南アジアや南アジアで海外研修事業などを行う「スパイスアップ・ジャパン」などグループ数社を経営。
大住良之
◎サッカージャーナリスト。1951年神奈川県横須賀市生まれ。『サッカー・マガジン』編集部勤務を経て1988年からフリーランスに。日本のサッカーの発展をテーマとし、日本代表、Jリーグを中心に、1974年西ドイツ大会以来8回のFIFAワールドカップをはじめ、数多くの国際大会も取材。『東京新聞』の連載コラム「サッカーの話をしよう」、雑誌、インターネットを舞台に執筆活動を続けている。

文=大住良之 写真=みんなの鳩サブレースタジアム 編集=宇藤智子

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