いい時計を着けるのは、プロとしてひとつの目標

点取り屋で鳴らした播戸竜二は、緑のピッチを離れてもなお走り続ける。見ると現役時代の気持ちが蘇るという、スピードマスターへの思いを語った。


「1998年末にこの時計を購入したんですが、プロとしていい時計をつけるというのはひとつの目標でした」

所有するオメガ「スピードマスター」(写真は現行の最新モデル)を見ながら楽しそうに語ってくれたのは、元プロサッカー選手の播戸竜二さん。この時計にはとても思い入れがあるという。

「Jリーグのガンバ大阪に入団してプロになったのが98年なんですが、はじめは練習生だったんです。だから報酬も月10万円で。姫路の実家から練習場まで1時間半かけて電車で通ってました」

「2試合出場したらプロ契約」というクラブが提示した条件を満たし、その年の5月にはプロ選手に。「給料は倍や!と言われましたが、それでも20万円(笑)」

そして、その年の10月。99年のワールドユース大会の出場権を得るための大会、アジアユース(19歳以下)の日本代表に選出された。

「この大会で準優勝して出場権を獲得したのですが、そのボーナスで20万円もらったんですよ。それで時計を見に行って、オメガのスピードマスターに出合い、購入したんです。格好良かったし、予算と好きなデザインが合致したのがこれでした」

播戸さんの世代は、同年生まれの小野伸二や稲本潤一など錚々たる選手が揃う黄金世代とも呼ばれており、ワールドユースでも準優勝という偉業を達成している。思い出のスピードマスターを見るたび、高みを目指していた当時の情熱がよみがえると播戸さんは語る。

2年前に播戸さんは現役を引退。現在はメディアへの露出を積極的に行い、企業の経営にも参加。アスリートのセカンドキャリア支援の取り組みのほか、JFAのアスリート委員、SDGs推進チーム、今年発足するWEリーグの理事も務めている。

「JFAが今年の9月10日で100周年ですが、さらに次の100年をどう動くかを考えています。例えば、グランドの芝生化というのがJリーグ発足当時からあるんですが、これはサッカーだけじゃなくて、芝生があることで、そこに人が集まって運動できることを目指しています。地域の発展にサッカー界も貢献することが目標です」
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text by Ryoji Fukutome | illustration by Adam Cruft | edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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