「店外の飲食体験」が通常的な選択肢となるファストフード業態では、もともとデジタル化が進んでいた。デジタル経由の注文比率が高いといわれるスターバックスとチポレ(メキシカン料理のファストカジュアル)を紹介すると、まずスタバでは、2015年よりモバイルオーダー&ペイを開始し、オペレーションを進化させ、ユーザーを右肩上がりに増やしてきた。チポレでは最初の提供こそ2009年と早いが、現在のようなモバイルオーダーアプリは2017年より提供している。直近決算でのデジタル経由の注文が占める割合はスタバで26%、チポレは48.5%を占めるまでに成長し、特にチポレは前年同期比10.5%増の伸びを示している。
チポレのモバイルオーダーアプリ。注文画面(左)と受け取り時間の表示画面(右)
この2社に共通している点は、単に利便性を良くして「注文」方法を増やすためだけにデジタルを活用したのではないことだ。「決済」や「リワードプログラム」と繋ぎ、統合したデータを活用して、顧客理解を深め、顧客の行動に適した「パーソナライズ」した体験(サービス、オファーなど)を提供する。そうした活動との相乗効果として利用率が加速し、これらの全てのピースが出揃うにつれて、2社のデジタル構成比は拡大したのだ。
「リワードプログラム」と連携されたスターバックスのモバイルオーダー(撮影:IBA)
コロナ禍で特に強化された「店外飲食」×「デジタル」の王道施策
コロナ禍では、スターバックスやチポレの他にも多くのチェーンが、生き残りと成長をかけて、「店外飲食」×「デジタル」の取組みを加速させた。特にファストフード業態を中心に強化された取り組みは、次の4つである。
施策1:ドライブスルーの生産性強化
国内市場でも言えることだが、郊外型店舗かつドライブスルーの有無がコロナ禍の業績の明暗を分けた。ドライブスルーは、それだけコロナ禍に強い顧客体験といえるが、一方で注文・支払い・受け渡しを1ラインで順にこなさねばならず、行列を招きやすい仕組みともいえる。そこで各社が取り組んだことは、ドライブスルーのオペレーションと処理能力の向上だ。仕組みのお手本にされたのが、米国のドライブスルーでの人気の高いチェーン、チックフィレ(チキンバーガーのファストフード)だ。例えば、タブレットを持った店員が、並んでいる車の中の顧客に対し事前に注文と決済を行ったり、ダブルレーン、トリプルレーン形式のドライブスルーを備えたプロトタイプが発表されたりした。