なお、本記事はIBAカンパニー射場瞬と、Honest共同代表取締役関野桃子との共著で作成する。
コロナ禍が加速させた「店外の飲食体験の強化」
コロナ禍により約4分の1市場が縮小した米国の外食産業だが、その厳しい環境変化を生き抜くために、大手外食事業者が重点的に取り組んだことは何か? それは、テイクアウトやドライブスルー、デリバリーをはじめとした「店外での飲食体験の強化」である。
日本でも見られた、飲食業界でよく見られる動きのように聞こえるかもしれないが、これは単に新しい売り方を提供する、という話ではない。外食産業にも様々な業態があり、全ての業態が「お持ち帰り」を前提にした設計をされているわけではない。そのため、商品自体や容器の設計から、「店外注文」を考慮した調理場などの店舗設計、そもそもの業態開発など、総合的な変革やアップデートが求められる。コロナ禍、スタッフが客席で料理提供を行うテーブルサービス業態がそうした変化を強いられたことは想像に難くないが、一見問題なさそうなファストフード業態の中でも、質の高い料理とサービスでイートインを強みにしていたり、都市部や商業施設内を中心に出店していたりした事業者も、自社戦略を見直す必要があった。
「店外の飲食体験の強化」のためのデジタル活用とは?
米国では、コロナ禍以前から「店外の飲食体験の強化」は重視されていた。というのもデリバリーサービスの登場と躍進を含め、デジタル活用との親和性が高いこの領域では特に、新しい「店外の飲食体験」の選択肢やオペレーションを管理する技術が登場し、進化していたからだ。コロナ禍はその流れを加速させたにすぎない。
さてデジタルを用いることでどのような顧客体験が可能となるか。例を挙げると、事前にモバイル経由で注文(モバイルオーダー)した料理を、店頭で受け取ったり(グラブ・アンド・ゴー)、駐車場で受け取ったり(カーブサイド・ピックアップ)するような顧客体験が該当する。前回説明した、流通業界でいうところの、先にオンラインでオーダーして店舗で受け取る、BOPIS (Buy online Pick up In-store)の飲食版のようなものだ。顧客からすると利便性の向上や非接触による安全性が、店舗にとっては新規客層の開拓や、顧客とのデジタル接点の創出、注文対応の人件費削減といった効果が期待される。
「店外の飲食体験」のオプション(資料提供:Honest)