急騰の一因となったのは、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国で構成される「OPECプラス」が従来の協調減産の方針を維持したことだ。OPECプラスは7月の会合で、日量580万バレルの減産幅を段階的に解消することを決定。8月から毎月同40万バレルずつ協調減産を縮小している。
4日に開かれた今回の会合では11月も現在の縮小ペースを持続することを決めた。「石油市場のファンダメンタルズや見通しに関するコンセンサスなどを考慮し、7月の会合で承認された生産調整計画を再確認した」などとプレスリリースで公表した。リリースには最近の原油の値動きや天然ガス価格高騰の影響などへの言及がなく、「簡潔な内容だった」(欧米のメディア)ことに市場は敏感に反応。産油国の結束力の強さを嗅ぎ取った。
米国、インドなど消費国からの要請を受けて「一段の供給拡大に踏み込むのではないか」との観測も流れていただけに、これまでの方針を見直さなかったことで先高観が一気に広がった形だ。「(OPECプラスは)世界的なエネルギー危機への対応を求める米ホワイトハウスの要請を冷たくあしらった」(英フィナンシャル・タイムズ紙電子版)。
供給面の制約はほかにもある。特に2010年以降のいわゆる「シェール革命」で世界トップの産油国となった米国の生産量の伸び悩みを指摘する市場関係者は多い。同国エネルギー情報局(EIA)によると、10月1日時点では日量1130万バレル。昨年8月の同970万バレルからは増加傾向にあるが、昨年3月の同1310万バレルの水準を依然として下回る。
回復が鈍い理由のひとつは、シェールオイルの開発などの動きが停滞していることだ。原油価格は昨年、歴史的な大暴落を演じた。同年4月にはWTI先物が史上初のマイナスを記録。急落で大きな打撃を受けたのがシェールオイルの採掘業者である。採算を維持するために必要な原油価格のレベルを大幅に割り込んだことで、窮地に追い込まれる業者が相次いだ。負った傷はあまりにも深く、油価反発でも完全には癒えていない。
米石油サービス会社のベーカー・ヒューズの調べによれば、同国の石油の掘削装置(リグ)稼働数は10月8日の週で433基。昨年8月14日の週(172基)を底に回復が続いているものの、同じく昨年3月時点に比べると6割程度の水準にとどまっている。