和のボタニカル薫る日本のクラフトジン

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は10月号(8月25日発売)より、「季の美」をご紹介。6つのエレメントが、ブレンドによってバランスよく優美に調和している1本だ。

祝杯をあげるとき、自分自身の時間を楽しむとき、孤独をかみしめるとき……
一杯の酒と向き合う空間に身をおくひとときは、明日への活力となる。


普段、なにげなく使ってはいても、その意味は何かと改めて問われたら、はて、と不安になる言葉がある。例えばクラフトという言葉。これはハンドメイドや職人の手技を表す。商品を指す場合には、つくり手のこだわりや想いが詰まったユニークな少量生産が多いのも特徴だ。

飲料の世界では2000年代後半にクラフトビール(それ以前は地ビールと呼ばれていた)ブームが到来し、20年代に入ってからはクラフトコーラというジャンルも登場した。そのちょうど中間期となる2016年に誕生したのが「季の美」。当時、日本初のジン専門蒸留所がリリースしたこのジンは、世界におけるクラフトジンブームの一端を担い、またその後の日本のクラフトジンメイキングに先鞭をつけることとなった。

その内容は存分に“クラフト”にして、京都の風土を意識している。つまり、ベースとなるのはジンでは初となるマイルドなお米のスピリッツ。仕込みにはやわらかい京都・伏見の伏流水を使用。そしてジンには欠かせないボタニカルには、日本産のハーブや果実、樹皮、根や葉、種子をふんだんに採用し、これらボタニカルを6つのエレメントに分類したのち、抽出・蒸留した原酒をブレンドするという、なんともハイスペックなクラフトジンなのである。

「6種の原酒とはすなわち、ジュニパーやオリスで骨格を成す『礎』や、京都産のフレッシュなユズの果皮を使う『柑』、ピリリとした存在感を放つサンショウの『凛』など個性豊かなラインナップ。この6つの要素を探しながら味わうのが『季の美』ならではの楽しさでしょう」と語るのは「Sky Gallery Lounge Levita」バーテンダーの中西孝行だ。今回は「季の美」を、生姜の絞り汁を加えたカクテル「ジンジャーギムレット」に仕立て、食前にふさわしい1杯を提案してくれた。チャンドラーの名作『長いお別れ』には「ギムレットにはまだ早すぎる」という有名な台詞があるが、こんなさわやかなギムレットなら、明るい宵のうちから飲みたくなりそうだ。

この6つのエレメントが、ブレンドと後熟によってバランスよく優美に調和していることからも、「季の美」は“和をもって貴しとなす”日本らしいモノづくりが息づくスピリッツと言えるだろう。猫も杓子もクラフトという言葉で飾られがちな昨今だが、トレンドのキーワードだけに終わらせない、真のクラフトマンシップにあふれたジンがこの「季の美」である。

季の美 京都ドライジン



容量 | 700ml
度数 | 45度
価格 | 5500円(税込み参考小売価格)
問い合わせ | ウィスク・イー Tel. 03-3863-1501
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photographs by Yuji Kanno text by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.086 2021年10月号(2021/8/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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