幸物氏は、SUNDREDとの連携がその突破口になることを期待している。特に、インタープレナーは重要な役割を担うだろう。イノベーションのキーは「人」であるからだ。
各地でいくつものラボをつくってきた中村氏も同意見だ。これまでに自治体が中心となった実証実験などIoT推進プロジェクトをいくつも見てきたが、多様な主体同士の連携を促していくためには、中核となる人物が欠かせなかった。
複数の組織に横串を刺し、現地のコミュニティを巻き込んでいく越境人材(インタープレナー)は、新産業共創のキーマンになるだろう。
経済産業省 関東経済産業局 地域経済部 産業技術革新課長 幸物 正晃氏
新産業を共創する最大の目的とは
このように、SUNDREDの新産業共創はリビングラボやインタープレナーなど、新産業の共創に欠かせない要素を持ち合わせている。しかし、最大の特徴は、ひとりひとりの「Well-being」の実現、という大きなテーマが根底にあることだ。
これまでは、大量生産されたものが生産者から消費者へ一方通行で送り出される、マス社会であった。しかし、個人がエンパワーされ、消費者の声が大きくなった今、より細部の課題に手が届くカスタマイズや、モノではない「心身の充足」が求められている。
つまり、社会をどう切り取るかによって、浮き彫りになる課題にもバリエーションが出ているのだ。では、どのように課題を抽出し、ソリューションを見出していくのか。
留目氏は、重要なのはオープンな対話を重ねることだという。対話することで、目的の解像度が高められ、共感の軸がつくられていく。リーダーのあり方も、よりナチュラルに生まれ、ときに入れ替わるなど柔軟性をもって良いはずだ。生産者と消費者という明確な位置付けが薄れ、みんなが参加者として繋がる社会になるだろう。
このような背景から、留目氏は、コミュニティをつくることが新産業そのものである、という仮説をもっている。ポジティブ心理学でいうところの、HERO(Hope、Efficacy、Resilience、Optimism)が共創のモチベーションの種になるのではないだろうか。
SUNDREDが目指すのは、Well-beingを実現する新産業の共創であり、Well-beingを求め続ける限り産業は発展していくと考えている。
これからの未来に期待すること
最後に、3人に実現したい未来について伺った。
幸物氏が目指すのは、地方が儲かる社会だ。今までは、東京圏の人たちによって新しいものが生み出され、それが地方に転用されることが多かった。しかし、今後はエコシステムづくりやもっと前の段階から地方の人材が参画できるよう、間口が開かれた社会をつくっていきたいという。経済合理性をもたせることも、新しいシステムを定着させるには不可欠な要素だからだ。