立ち退き猶予措置が無効の米国 追い立ての波はまだも今後に不安

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米国では8月末、バイデン政権が実施していた家賃滞納者への立ち退き猶予措置が最高裁で無効とされた。しかし米AP通信が報じたところによると、立ち退き猶予措置の一部の支持者らが恐れたような、賃借人の大規模な追い立ては発生していない。

とはいえ新たな連邦規模のデータからは、多くの賃借人が家賃を滞納していて、今後数カ月で退去させられることを恐れていることが示されている。

AP通信によると、各州では数カ月の遅れを経て、連邦政府の家賃補助の支払いが格段に増えている。7月に支援を受けた人の数は34万人だったのに対し、8月は42万人だった。

連邦政府の家賃補助が支払われるのを目にした一部の大家は、賃借人を退去させる代わりに、支払いを期待してもう少し待つことを決めている。

バイデン大統領は3月、1兆9000億ドル(約215兆円)規模の新型コロナ対策法に署名し、州や地方自治体への支援金分配作業の監督者としてジーン・スパーリングを任命した。スパーリングはAP通信に対し、州や地方自治体が運営する家賃補助や立ち退き回避プログラムも、より多くの人の立ち退きを防ぐ役に立ってきたと述べている。

多くの賃借人はいまだに、家賃を何ヵ月分も滞納している。米国勢調査局に対して家賃の支払いが遅れていると答えた賃借人は9月前半には14%で、来月の家賃を払えるかどうか自信がないと答えた人は10%近くいた。

国勢調査局によると、支払いが滞っている賃借人の半分以上は1カ月以上支払いが遅れていた。また半分以上は、その後2カ月のうちに立ち退きになることを覚悟していた。

全国規模の猶予措置がない中で、バイデン政権は先週新たに発表を行った。それによると家主は今後、米住宅都市開発省(HUD)から補助を受ける住居の借り手に対し、1カ月前に立ち退きの通告を行わず、また国の家賃支払い補助を申請できることを賃借人に伝えることなしに立ち退かせることができなくなる。

スパーリングはAP通信に対し、「これまでの状況は今のところ、猶予措置が無効になってからの1カ月の状況として以前予想されていたあらゆる最善のシナリオよりも確実に望ましいものだ」と述べつつ、「こうしたデータはまだ初期段階のもので確実ではなく、こうした報告には示されていない苦悩や困窮が生じている可能性が高い」と述べた。
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翻訳・編集=出田静

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