正直さが普通である環境を作らなければ、組織運営は行き詰まる。もし上司やリーダーが、自分の気に入らないことを言う人を無視したり、からかったり、降格や解雇したりすれば、その下で働く人は口をつぐむことが多くなり、自分を守るためにあいまいな表現を使うようになる。こうした環境は、抜け穴や言い訳を生む。
ロン・カルッチの良書『To Be Honest(正直になること)』では、リーダーが個人の考えや会社の価値観として正直さを推奨しているのにもかかわらず、自分は隠し事をしている場合、その影響は深刻だと指摘している。不安を和らげるためによかれと思って真実を隠していたのかもしれないが、人はそれを見透かせるものだ。
「失敗は許されない」のまずさ
リーダーが、部下の士気を高めようと使う言葉に、「失敗は許されない」がある。これは、生きるか死ぬかの状況では適切な言葉かもしれないが、売り上げが下がっているときや新たな戦略の実現のため大規模な転換が必要なときにこの言葉を使うのは大げさであり、「何をしてでも勝て」と受け止められてしまうこともある。「何をしてでも勝て」という態度が一因となって起きた企業のスキャンダルは数知れず、フォルクスワーゲンやGM、エンロン、ウェルズ・ファーゴ、最近ではセラノスでのものなどがある。
では、リーダーがすべきことは何だろう?
1. 表面下にあるものを見る
直属の部下に反対意見を恐れない人が1人か2人いるからといって、自分の会社が正直な組織であると考えてはいけないが、そう誤解してしまうことはある。
歯に衣着せぬ言動で恐れられていた最高財務責任者(CFO)のジョージを例に説明しよう。彼はその好戦的な態度から周囲に避けられていたが、上司はそのことを知らなかった。部下たちは、ジョージからさまざまなものを隠すようになっていた。ジョージは財務データを持っていたものの、その裏にある状況の理解に欠けていたため、ある不正直な部長が約2000万ドル(約22億円)の損失を出すのを防ぐことができなかった。
ジョージはもちろん、真実を隠した人々を非難した。しかし問題は、最高経営責任者(CEO)にあった。CEOは、ジョージの言動をみて、高い水準を徹底的に追求する気質があると勘違いしてしまったのだ。