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鳥屋尾優子(撮影=柳原久子)

上下関係、ジェンダー、社内外の枠組みなどに縛られずに、チームや組織、あるいは業界に多くの実りをもたらした女性たちは、何を考え、どう行動したのか。

Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。

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「リーダーシップは誰もが発揮できるもの」──。そう語るのは、ワコールホールディングスの子会社であるワコールアイネクスト代表取締役社長を務める鳥屋尾 優子(とやお ゆうこ)だ。

鳥屋尾は、ワコールに入社後、経理・財務部門を経て、広報部門で社内報の編集、企業PRなどを行う宣伝部門を経験し、2016年には「美」にまつわる学びの複合施設「WACOAL STUDYHALL KYOTO」を立ち上げた。その後、ダイバーシティグループ人事支援室長を経て、昨年4月からは、障がい者の雇用の促進と安定を目指す特例子会社「ワコールアイネクスト」の代表を務めている。

遠くに石を投げておく


「仕事とプライベートをあまり区切って考えたことがないんです。ひとりの人間なので、仕事と生活を分けようと思っても、どうしてもリンクしてしまう。仕事を単体として捉えられないんですよ」

鳥屋尾にこれまでのキャリアについて聞くと、こんな答えが返ってきた。

仕事やキャリアと自分の人生を切り離さない。鳥屋尾はこれを中学生のころから意識していた。根底にあるのは、「遠くに石を投げておく」という考え方だ。未来へのマイルストーンを設定すると言ってもいい。

目標や夢といった大げさなものではなく、「こんな風に歳を取れたらいいな」というような、漠然とした人生のビジョンを常に意識しておくのだという。

「例えば、『60歳くらいで可愛いおばあちゃんになる』という石を投げたとします。そうすると、『可愛いおばあちゃんって、どんな感じなんだろう』と、自然と周りを観察するようになるわけです。そのうちに、可愛いおばあちゃんはいつもニコニコしていて、多くの人に頼られているというようなイメージが見えてきて、そうなるための行動がとれるようになる」

この石を投げるという行為は、単純そうに見える伝票整理の仕事をするときにも効果を発揮すると鳥屋尾は言う。「みんなに声をかけてもらえる存在になろう」と思えば、伝票1枚が周囲とさまざまなコミュニケーションをとる媒介になり、1つのタスクにいろいろな意味づけができるようになるからだ。

「未来」という遠くに投げた石と、今自分が置かれた場所を見比べながら、その意味を見出していく。これを鳥屋尾は「チューニング」と呼ぶ。思い描く姿と今の自分をどのようにチューニングするかで、目の前のタスクは全く別物に見えてくる。

「投げた石から逆算して今やるべきタスクを見てみれば、たとえ自分はやりたくないと思っている仕事でも、『この経験は後々役に立つ』ということが分かります。人生に起きることで意味のないことはないと思っているので、今をどう意味づけするかという部分を大事にしています」

文=松崎美和子、アステル 写真=柳原久子

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