世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

左:特定非営利活動法人Learning for All 代表理事 李炯植 右:エシカルジュエリーブランドmaramanaディレクター/Project Sally 代表 早水綾野

テレビ朝日の新番組「挑戦者の原点~My Episode 0~」では、挑戦者たちの原点(= My Episode 0)が語られる。放送に合わせ、30 UNDER 30 JAPAN 2018受賞者、Learning for All 代表理事の李炯植と、maramanaディレクターの早水綾野の対談が実現。互いに「原点」を語り合った。


いまの活動につながる原点
「My Episode 0」


李 炯植(以下、李):僕は、「子どもの貧困に、本質的解決を。」というミッションを掲げる、Learning for All というNPO団体の代表をしています。経済的な貧困や虐待など、困難を抱える子どもたちに対して、学習支援・居場所づくり・食事の支援に家庭訪問といった包括的な支援をしている団体です。

早水 綾野(以下、早水):私は「maramana」という、南太平洋にあるソロモン諸島の貝細工をフェアトレードで輸入して日本で販売するエシカルジュエリーブランドを展開しています。日本でも手に取ってもらえるように、私がデザインを提案していますが、貝を拾うのも加工するのも現地の方。現地の皆さんの収入につながる活動です。

:僕は兵庫県尼崎市の出身で、市営団地で生まれ育ったのですが、比較的貧困家庭が多い地域です。僕は小学6年生のときの恩師が進学塾や中高一貫校の受験へと導いてくれた結果、東大に入りましたが、東大の同級生と僕の育ってきた環境はあまりにも違っていました。

いまの活動の原点となる「My Episode 0」は、成人式で地元に戻ったときの出来事です。久々に再会した小学校の同級生は、シングルマザーで3人目の子どもが生まれたばかりでした。成長していく過程で、地域特性や経済状況など個人の努力ではどうにもならないことの影響は大きく、人生の選択肢が狭まっていった結果を突き付けられた気がしたんです。その現実を東大の友人たちに話したら「努力しなかったほうが悪い」と。その発言に違和感を覚えたし、怒りも感じた。それが始まりでした。

早水:私は、「生きがい」を見つけられなかった高校生のころにフィリピンのストリートチルドレンの本を読んで、胸がぎゅっと締め付けられて以来、開発途上国支援に興味がありました。それで、大学時代にお金をためて1カ月間カンボジアへ。スラム街で子どもたちに勉強を教えるインターンシップに参加をしました。その後、大学を卒業して就職したのですが、開発途上国支援をしたい気持ちはずっとありました。

2年間腰を据えて取り組めることがJICAの魅力だったので、退職をして応募し、ソロモン諸島ではマラリア対策に携わる活動をしていました。2年間の滞在を終えて、いよいよ帰国するときに、一緒に働いていたサリーという頑張り屋の女性から、こんな言葉をかけられたんです。「前は毎日孤独でつらいと思って仕事をしていたけれど、今は今日も頑張ろうと思って目覚めてる。綾野のおかげ」。これまでの自分の活動が肯定されたようで本当に嬉しかった。ちなみに、「maramana」の運営団体は「Sally」という名前なのですが、サリーのように、前向きにチャレンジする女性をひとりでも増やしたいという気持ちで名付けたものです。


早水綾野 エシカルジュエリーブランドmaramanaディレクター/Project Sally 代表

開発途上国で主体性を引き出せた忘れられない経験


:開発途上国で女性の活動を支援することは、簡単なことではありませんよね。

早水:現地には、女性は仕事を頑張らなくてもいい、という雰囲気があります。でも「やってみよう」という起業家精神みたいなものをもっている女性は必ずいる。そういう環境に、私のような外国人が入って働くことで「女性も頑張っていいんだ」という雰囲気が生まれ、現地の男性は外国人相手には遠慮するので反対もしません。私のその姿勢が、頑張りたい女性にとって、気持ちの支えやサポートになったと思います。実際、変化もありました。

ソロモン諸島でマラリア対策をしていたとき、私だけでなくみんなが発言・行動できる組織にしたいと、20人くらいの村民が参加するコミュニティ開発をしたんです。最初は、年配の男性の声が強いけれど、年齢や性別に関係なく一人ひとりの意見は平等だということを繰り返し説明する。そうすると徐々に女性が発言するようになって、女性の意見がプランに組み込まれるようになっていきました。結果、ひとりの女性が「村のみんなが教会に集まる日はお母さんや子どもも来るから、そこでマラリア対策について話したい」と言って実際に行動してくれたんです。それをきっかけに「どうして下痢になるの?」「手洗いが大事だね」と、彼女が中心となり、母親たちによる衛生の啓発活動が行われるようになりました。

:現地の方の主体性が引き出されている。それが課題の本質に変化を起こしていて、本当にすごいことだと思います。


李炯植 特定非営利活動法人Learning for All 代表理事

社会起業家が目指す未来


早水:ソロモン諸島だけではなく、アフリカ南東部のマラウイにも縁ができたんです。2019年に中国の深圳で行われたイノベーションラボという国際イベントで出会った、ファッションのプロジェクトを展開しているマラウイ人の女性と「絶対何か一緒にやろう!」と話していたことが、いよいよ実現できそうです。ソロモン諸島とマラウイをつないで、お互いの経験や知恵をシェアして、私と彼女だけでなく、現地のスタッフ同士のつながりができたらいいなと思っています。李さんのこれからの目標はなんでしょうか。

:僕は、そうですね……長引くコロナで、貧困問題は深刻化しています。日本では7人にひとりの子どもが貧困状態にあるといわれていて、実はどこにでもある問題なのですが、関心がある人とない人がいる。どうすれば関心をもってもらえるのだろう、他者の幸せを願えるのだろうと、よく考えます。貧困問題を解決するということはもちろん、社会のマイノリティと呼ばれる方々の立場から、この社会のあり方をアップデートし続けられるシステムを、どう構築できるのか。これは、これから先も取り組んでいきたいテーマです。早水さんはいかがですか。

早水:私はやはり、開発途上国の女性とかかわり続けたいですね。多様性という言葉は一般的になりましたが、いまも女性は結婚して子どもを産むことが幸せ、という共通認識は根強くあります。でも、それは本当に正しいことなのかと、私は疑問に思います。ソロモン諸島でもシングルマザーは多いですが、自分で選択している人もたくさんいて、幸せに暮らしている。なのに世間からは、ずれているという見られ方をする現実があります。ソロモン諸島だけではなく、人はみんなそれぞれ違う価値観で、幸せと感じる状態もそれぞれなんだという前提で、社会がつくられていけばと願います。そういう社会のなかで、開発途上国の女性たちとアクションしていきたいです。

:早水さんも僕も、こうして未来像を明確に描くことができことができるのは、強烈な原体験があるからかもしれませんね。

JICA
https://www.jica.go.jp/index.html


り・ひょんしぎ◎特定非営利活動法人Learning for All 代表理事。東京大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科修了。2014年に団体設立後、これまでに延べ9,500人以上の困難を抱えた子どもへの無償の学習支援や居場所支援を実施。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会理事。

はやみ・あやの◎エシカルジュエリーブランドmaramanaディレクター/Project Sally 代表、元JICA海外協力隊。ソロモン諸島、ルワンダ、ガーナにて開発事業に携わる。2019年にはUNLEASHイノベーションラボへSDGsタレントとして選出された。

Promoted by JICA / text by Maho Ise / photographs by Kenta Yoshizawa

あなたにおすすめ